【街景寸考】コロナ禍で唖然としたこと

 Date:2020年05月20日08時01分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 新型コロナ禍の現在、これまで見えなかった事象があぶり出され、感心するやら、驚くやら、唖然とするやら、これまでの日常とは違う日々に遭遇する機会が増えた。

 まず感心したのは北海道の鈴木知事だ。一番若い知事だが、全国に先駆けて緊急事態宣言を出すなど新型コロナ対策に道筋をつけた。道内を対象に公立小中学校の臨時休校を最初に実施したのも鈴木知事だ。これらの初期対応は見事だったと言うほかない。

 政府が新型コロナ対応にもたついている中、大阪・兵庫間の往来自粛等を呼びかけ、更には全国に先駆けて自粛要請および解除の基準「大阪モデル」を設定した吉村知事の実行力や、国のガイドラインを超えて初期段階で一気に600人以上ものPCR検査をやってのけた和歌山県の仁坂知事の思い切った対応にも感心させられた。

 新型コロナ禍で知事がメディアに登場する機会が増えてきたことで、各都道府県知事の手腕を品定めできるようになった。鈴木知事や吉村知事など高く評価できる知事ばかりでなく、リーダーシップを発揮できない知事がいたり、ただ意気込んで空回りしたり、危機感がまるで足りないという知事がいることも知った。

 驚かされたのは、日本のPCR検査数が他国に比べて極端に少ないということだ。日本の医療水準や医療体制は先進諸国に引けを取らないレベルにあると思い込んでいたが、非常時の場合はこれほど脆弱だったとは思いもよらなかった。しかも、フランス等でPCR検査を支えている全自動検査機が日本製であるというのに、肝心の日本は岩盤規制のせいでまったく活用できないのが現状であることにも驚いた。

 驚きはまだある。日本のPCR検査が当初遅々として進まなかった背景に、中国の習近平国家主席の国賓来日が延期されるか否かの決定待ちがあったらしいことや、東京五輪・パラリンピックの延期や中止を避けようとしていたらしいという風聞である。これらが事実だったとすれば、政府はこれらを優先するあまり国民の命を軽んじたことになる。

 唖然としたのはアベノマスクである。政府の緊急対策で最初に取り組んだのがこのマスクだった。緊急と言うのであれば、一刻も早く救済すべき生活困窮者を先に支援すべきではなかったか。どうしてもマスクが先だと言い張るのなら、まずはマスクや防護服の不足を訴えている医療機関等が先であるはずだ。優先順位が違うのはサルでも分かる。

 そのアベノマスクは汚れやカビ、シミがあり、異物の混入もあり、おまけに紐の長さも異なっていたという声まである。結果、店頭から消えていた市販のマスクが出回り始めたというのに、アベノマスクはまだ大半が届けられていない。笑えないオチである。

 466億円と不良品の検品費用8億円の価値があるマスクだとは、とても思えない。