【街景寸考】グレタさんのこと

 Date:2019年10月09日14時01分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 カナリアという小鳥がいる。スズメより少し大きめの鳥で、羽根の色は黄色っぽいイメー
ジがわたしの中にはある。かつて、そのカナリアは炭坑の坑内で発生する毒ガスを早期に検
知するために使われていた。どの鳥よりも毒ガスには敏感に反応する能力があるのだろう。
現在は、ペットショップで鳴き声のきれいな小鳥として人気があるようだ。

 このカナリアとスウェーデン人の16歳の少女グレタさんとが、命の危機を事前に察知
できる特別の能力を持っているという意味で、重なって見えた。自然界では弱い生き物ほど
敏感な危機察知能力を持っているように、グレタさんにも同様の能力が具わっているよう
に思えたのである。
グレタさんとは、「未来のための金曜日」を掲げて毎週金曜日に学校を休み、スウェーデ
ン議会の前に一人座り込んで地球温暖化対策を訴えてきた少女のことである。今、彼女のこの活動の輪が世界中に広がろうとしている。先日、そのグレタさんが国連の温暖化対策サミットで演説しているのをテレビで見た。

「わたしはここにいるべき(人間)ではありません。海の反対側で学校に通っているべきなのです」「(温暖化で)生態系は崩壊しつつあります。わたしたちは大量絶滅の始まりにいるのです」「あなた方(大人たち)が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よくそんな話が言えますね」「(地球温暖化を防ぐ)行動を起こしていないのならば、あなた方は邪悪そのものです」「わたしたち(子ども)を裏切ることを選ぶなら、わたしは言います。あなたたちを絶対に許さないと」。

 以上は、演説の中でわたしが特に印象に残った言葉の抜粋である。
まだあどけなさを残したグレタさんは、国連の会場で目に涙をためながら目の前の大人たちを睨むようにして、地球温暖化の危機を訴えていた。その姿を見てその言葉を聞いて、わたしはカミナリで頭を打たれたような衝撃を受け、心が強く揺さぶられた。言葉一つひとつに、彼女の真心が伝わってきたからかもしれない。これまで聞き慣れた地球温暖化の問題を、初めて真正面から受け止めることができたような気がしたのである。

 それまでのわたしは、迫りくる地球温暖化の危機をまるで他人事のように思い、北極の氷がどんどん溶けていても、異常気象による熱波や洪水などが続いていても、あくまで第三者としての立ち位置で傍観してきただけだった。まさに、わたしのような大人のことを、グレタさんは「邪悪そのもの」だと言いたかったのだと思う。

 か弱いカナリアと重なって見えるのは、グレタさんだけではない。今、香港で自由と民主主義の危機に命をかけて立ち向かっている中学生や高校生にも、更には武装勢力に銃撃をうけながらも女性教育の必要性と平和を訴え続けるパキスタンの女性マララさんにも、グレタさんと重なって見えてきた。