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【四字熟語の処世術】克己復禮(こっきふくれい)
Date:2015年08月26日09時16分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
克己復禮…己に克って禮(礼)に復る(おのれにかって、れいにかえる)と読む。「己」とは自分自身、「克」とは勝つことであり、自分自身に打ち勝つこと、すなわち私情や私欲に負けないということだ。「復」るとは返ることであり、「禮」とは社会の規範や礼儀にかなった行いのことを指す。したがって、全体の意味するところは、常に我が身を省みて、私心に打ち勝ち、これを遠ざけ、他を先とし、社会生活上の規範、秩序を保ち、人としての道に立ち返ること、わたし的にはこんな感じで捉えている。
克己復禮…孔子様の言葉だが、頭で理解できても行うに難きことは明らかだ。自分に例をとっても、まず、己に勝てない。ちょっとした欲ですら克服できないでいる。ダイエットが必要な体になっていながら、未だに食欲すらコントロールできない。極めて卑近な例だが、これしきのことですら難しい。職場でもよく経験することだが、手柄を人に譲れないのも己に勝てない結果だ。いつも「自分が…自分が…」といって、「我」(が)ばかりを出している。私心を去るどころか、我という欲心で心は満ちている。お金に執着し、名誉や地位にこだわり恋々としているのも己を律し、己に勝てない自分がいるからだ。
己に克つことは実に難しい。生涯の課題だともいえる。しかし、己に克つ努力を続ける限り、それは自分の成長につながるはずだ。難しいからこそ、生涯のテーマとなる。易々として越えられないからこそ、成長は続く。そう考えれば、できない自分を許せる気もする。大切なことは、己に勝とうとする気持ちを失わないことだと思う。
礼という字の旧字体が「禮」だ。「示」に「豊」を合わせて禮という漢字が作られている。「豊」はまた「曲」と「豆」が組み合わさっていて、体を曲げて豆を拾う姿を表しているという。豊かなる恵みを与えてくれた自然、あるいは神様に身を低くして感謝の心を表すこと、それが「禮」の字義ではなかろうか。
思うに、禮とは心の豊かなるを示しているのだろう。心豊かにしてはじめて自分の内側に「ゆとり」が生まれ、それが私心を抑え他を先とする人道の範となる。ゆえに、克己復禮とは己に克って私心を去り、心を低くして人としての道を歩むことに他ならない。
私心を去るも、心を低くするも難きことこの上ないのだが、自分を成長させるために、できることからはじめたいと思う。まずは、何事にも感謝の念を持つことか…。