【四字熟語の処世術】「春夏秋冬」(しゅんかしゅうとう)

 Date:2015年10月20日09時13分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 コスモスの花が咲く季節が好きだ。青空、海、向こうに見える島、そこに咲く色とりどりのコスモスの花を見るのが何より好きだ。快晴の天はどこまでも高く、夏に疲れた体を癒してくれる。そんな青く澄んだ秋空と涼しく駆け抜ける風に揺れるコスモスは心をも開放し癒してくれる。

 日本は四季を肌で感じることができる国だ。その素晴らしさに、日本人の多くは鈍感かもしれない。先日、オーストラリアに滞在中でライターの三陽生人(みはるいくと)さんに話を聞いたが、今年、オーストラリアは冬からいきなり夏になったそうだ。毎年のことなのかどうかは知らないが、昨日までジャケットを羽織っていたのに翌日は半袖のTシャツにサングラスで歩いていたという。冬が日本ほど寒くはないシドニーとはいえ、夏冬の中間である春秋を感じる期間が極端に少ないのかもしれない。

 話は変わるが、春夏秋冬と聞くと、すぐに泉谷しげるの歌を思い浮かべてしまう。フォーク世代には忘れられない歌だ。
 
 季節のない街に生まれ
 風のない丘に育ち
 夢のない家を出て
 愛のない人にあう

 2013年の大晦日NHK紅白歌合戦に出場し、独特のパフォーマンスが話題になっていた。会場に集う人の手拍子に怒り、ギターを投げて去っていった彼は何を伝えたかったのだろうか。

 春をながめる余裕もなく
 夏をのりきる力もなく
 秋の枯葉に身をつつみ
 冬に骨身をさらけ出す

 そんな社会の底辺にいる人たちは、着飾ってNHKホールなんかに足を運べない。だから、今日、歌う歌は会場の人たちのためじゃない。テレビの向こう側で苦しんでいる人たちのために歌ったんだと彼は後に話していた。

 今日ですべてが終わるさ
 今日ですべてが変わる
 今日ですべてがむくわれる
 今日ですべてが始まるさ

 今日を新たな始まりにしようと結ぶこの歌には、今は苦しくても季節がめぐるように、きっといい日もやってくる。だから希望を捨てないで生きていこうという、泉谷流のメッセージが込められているのだと思う。

 春夏秋冬…大自然は毎日の営みをただ繰り返し四季を運ぶ。どんなに天変地異が襲おうともその歩みを止めることはない。ただ、淡々と気の候を運ぶ。

 春夏秋冬…その四季を感じることのできる日本に生まれたことに感謝する。そして大自然の営みに感謝する。そしてまた、その大自然から今を生きるための元気を素直にもらいたいと思う。