四字熟語の処世術 「大和撫子」(やまとなでしこ)

 Date:2015年11月02日10時43分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 大和撫子(やまとなでしこ)と聞くとなぜか小泉今日子の「ヤマトナデシコ七変化」が口をついて出てくる。同年代の方々にはご理解いただけると思うのだが、どうだろうか。上の娘が1歳の頃に流行っていた。娘は私にとっては初めての「愛児」。まさに「撫子」の由来通り、いつも撫でるように可愛がっていた。

 そんな娘が高校生の頃だったろうか、フジテレビ系の「月9」で松嶋菜々子主演のドラマ「やまとなでしこ」が放送された。ここ最近の月9ドラマの平均視聴率は12パーセント程度らしいが、このドラマの平均視聴率は 26.4パーセントもあったそうで、かなりの人気ドラマだったようだ。

 話は美貌と気配り上手でモテモテの客室乗務員、桜子を主人公とする恋愛物語。貧しい漁師の家に生まれた過去に決別しようと、玉の輿を目指して合コンに情熱を燃やす桜子。しかし、結局はお金では買えない真実の愛を見つけ、小さな魚屋で頑張る男性と恋に落ちる話が描かれていたように記憶している。

 子供が好きで見ていたのを横で一緒に見ている内にハマってしまったわけだが、拝金主義的な女性が、次第に本当の愛に目覚め、古来より日本女性の美徳とされた「清楚で凛とし、慎ましやかで、一歩引いて男性を立て、男性に尽くす甲斐甲斐しい女性の姿」という「大和撫子」本来の姿に目覚めるという、そんな意味からこのタイトルが付けられたのかなと、勝手にだが思っている。

 最近では「なでしこジャパン」をよく耳にする。いうまでもなく、日本女子サッカーチームの愛称だ。佐々木則夫監督率いる「なでしこジャパン」が、2011年のFIFA女子ワールドカップでアジア勢の代表チームとして初優勝したのはまだ記憶に新しい。2015年の大会では惜しくも準優勝に終わったが、なでしこジャパンの強さは今や世界が認めている。澤穂希選手や、宮間あや選手などの名は、女子サッカーに余り関心のない私でも知っている。

 ただ、残念ではあるが、あの溌剌としてグランドを走り回り、時には相手とぶつかりながらもボールに食らいついていく姿からは、本来の大和撫子のイメージは結びつかない。世界中でその名が知れ渡るにつれ、彼女たちのあのパワフルな姿が大和撫子なのかと、本来とは全く違った意味が定着しそうで心配だ。

 さてさて、我が家の撫子はどう育ったろうか。父親としてはなかなかの大和撫子と思ってはいるのだが、時折、彼女の旦那を見ていると、結婚前に夢見た大和撫子が、今や「なでしこジャパン」の選手に近づいていると、若干の不安を抱えているように見えて、陰ながら心配している次第である。あとはただ、せめて生まれて来る子が女の子なら、本来の大和撫子に育てて欲しい、いや、育って欲しいと思う、今日この頃である。

 ちなみに、大和の国、日本に咲く撫子の花は多年草で秋の七草の一つである。