【四字熟語の処世術】天真爛漫(てんしんらんまん)

 Date:2016年01月07日10時05分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 あけましておめでとうございます。本年もどうぞ四字熟語の処世術、よろしくお願い申し上げます。新年にあたり、昨年学んだ四字熟語を思い出しながら、新春にふさわしく「天真爛漫」をテーマに綴ってみたいと思います。

 私事ではございますが、待望の大和撫子は星と書いてステラと名付けられました。一日千秋の思いで待ち続け、誠心誠意で娘に尽くす旦那には感謝の言葉しか浮かびません。娘夫婦が琴瑟相和し、和顔愛語の絶えない家庭を築くことをただ願うばかりです。

 今年は申年です。猿といえば心の騒がしさに喩えられることもあるようです。百八煩悩の言われもそこにあるのでしょう。さて、国内、国外の政治経済は安定を欠き、テロの恐怖が一層人々の安らぎを喪失させてしまっています。そうした庶民の不安な気分が大自然の気に影響を与えているのか、春夏秋冬の四季の巡りも微妙に変化し、あちこちで自然の猛威が人々を襲い、不安をさらに増長させている気がします。

 太平の世の象徴である鼓腹撃壌、為すこと無くして為らざるは無しと言わしめた堯舜の御代。自然も人々同様に帝の大徳になびき、五日に一度の風を吹かせ、十日に一度の雨を降らせる、いわゆる五風十雨の穏やかな気候を演出し、まさに地上の楽園を現出させたと言われています。これを伝説だと笑ってしまうか、それともそんな理想世界を作リ出す夢をみるか。その選択は我々に委ねられています。次の世代を担う子供達のためにも、そうした世界を作る努力を一人一人が為すべき時が近づいているのかもしれません。

 全米で580万部を突破したベストセラー「ニュー・アース」の著者、マックハルト・トール氏はその著書の中で「時は来た。ついに人類は次のステージに移る」と訴え、我々に意識の覚醒を求め、「その準備はできているか」と問うています。とはいえ、そこまで大仰な話にするまでもなく、要は一人一人が克己復礼して己の欲に打ち勝ち、正しき行いを為す、という個人レベルの努力を続けることが、その第一歩ではないかと思うのです。

 大樹に茂った葉も時が来れば落ちて根に帰ります。落葉帰根は万物還元の法則がこの世に存在することを教えています。この世は高度に成長した物質文明ですが、その陰に取り残されたかに見える精神文明こそが、本来、中心となるべき世界です。形には見えませんが、心が体の主であり、体はその心に従たるものなのです。心が主となって体をコントロールする、そんな人間本来の姿に今こそ戻るべき時が来ているのです。

 心といい、魂というも、その本質は光です。心の豊かさは光の大きさ。自身の心の鍛錬はその光の量を増やすことに他なりません。自身の光を増し、他の人へも及ぼしていく。その回向返照の連鎖が世界を光で満たし、輝かしき太平の世を開くことにつながるのです。だからこそ、一人一人に心の修養が必要なのです。

 天真爛漫…表裏なく、ただ明るく純粋にして無邪気。赤子の豊かな表情は人間が本来持つ天真爛漫な本性を思い出させてくれる気がします。母を信じるに一点の曇りもなきその心は、母に無償の愛とは何かを教えてくれます。もっとも小さく、もっとも低き故に、すべての人の心が流れ込んで行きます。まるで水が高きより低きへと流れ注ぐがごとくです。赤子の心こそ上善。まさに上善如水、上善は水の如しです。

 初孫と迎えるはじめての新年。その天真爛漫な姿に癒されながらも、自分にも同じ本性が宿ることを信じて、表裏なく、明るく純粋に、そして無邪気に生きることを本年の目標にしたいと思います。