【四字熟語の処世術】前途洋洋(ぜんとようよう)

 Date:2016年04月15日15時11分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 入社式のシーズンである。社会人一年生の心の内は如何なものか。
某テレビ局の入社式の様子が先日テレビで放映されていたが、サプライズゲストで呼ばれていた女優の真矢ミキさんとタレントの国分太一さんのコメントが面白かった。

 新入社員を前に、まずは国分さんが「出世しそうな人につばをつけに来ました。真矢さんは出世しそうな人しか相手にしないですよ」と挨拶。真矢さんも腰を低くして「私はお芝居ができます。司会もやります。バラエティーもやります。どうかよろしくお願いします」とアピールしていた。もちろん、二人とも受け狙いではあろうが、意外と現実的な思いもこもっていそうで笑ってしまった。目の前に並ぶ卵が、孵化した後にどんな鳥となるのか。もしかしたらこの中に鳳となってテレビ局の柱になる人がいないとも限らない。まさに、彼らの前に敷かれた道は前途洋々としているからだ。

 前途洋洋…将来の見通しが開けている様をいう。テレビ局に限らず、今年の新一年生の前には前途洋々とした道が開けているはずである。

 ただ、視野を広げて、日本の将来、世界の今後をみれば、果たしてその前途が洋々としているかは疑問である。現在の国際情勢は前途多難の四字熟語の方がしっくり来るような気配だ。戦後70年、平和に慣れてしまった日本人ではあるが、周りにはきな臭い話が渦巻いている。テロの恐怖は決して中東やヨーロッパのような遠い世界の話ではない。近くの国にも自身の延命のために他国に危険な挑発を繰り返し、まるで核を弄ぶがごとき愚行を繰り返す指導者がいる。海洋の権益を我が物にしようとする大国の動向は、軍事力に任せての言動だけに無視できない危険水位に達している。

 経済面でも最早自国のみの安定発展を望むことはできない。他国の経済状況に大きく左右されるグローバル化の中にいる。他国の経済成長が減速し始めたり、あるいは破綻などと言うことにでもなれば、その波は一気に世界中に押し寄せ日本の経済にも陰を落とすことは避けられない。

 こうした閉塞感漂う社会を打破し、日本国だけでなく世界の前途を洋々とした希望溢れる世界に作り変えてくれる次世代の人材、それが社会人新一年生である。彼らの前に広がる道が、前途洋々としたものであることを信じ、また祈っている。