【四字熟語の処世術】自暴自棄(じぼうじき)

 Date:2016年11月28日17時06分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 自分を惨めにするような行動はやめよう。一時の感情やストレスに惑わされ、自暴自棄になり、後で悔やむような行動をとってしまうと結局さらに大きなストレスを抱えることになる。衝動を感じたら自分が惨めになる可能性を考えて思いとどまるようにしよう。

 「メンタリストDaigoの心を強くする300の言葉」という本に出てくる一節だ。友人の熱心な勧めもあり手にした本だ。Daigoさんによれば、我々の脳は我々が探し求めている情報や興味ある情報を無意識に集めているらしい。これをカラーバス効果というそうだが、パラパラと紙面をめくっていて目にとまったのがこの言葉だったのだから、その時の私には必要な栄養素だったのかも知れない。

 とはいえ、自分自身が自暴自棄に陥ったことはいまのところまだない。もちろん、一時の感情に踊らされたりストレスに苛まれることは少なくないが、自暴自棄まではなったことがない。おそらく、私の興味をひいたのは「自暴自棄」という四字熟語だったのだろう。

 自暴自棄…辞書によれば「希望を失い、自分などどうなってもいいとやけくそになること。失望などのために投げやりな行動をして、自分を駄目にすること。また、そのさま。」とある。

 人は辛い時期が続くと、目の前の問題や障害が決して越えることの出来ない壁だと思い自暴自棄に陥りやすい。目の前にある壁だけに全体像が見えていない。一二歩退いて壁の高さが確認できれば次の一手を考える余裕も生まれるのだが、切羽詰まった人にとっては、この一二歩の後退が難しい。冷静になるとは視点を変え、視野を広げることだが、そう簡単では無い。

 将棋は指している人よりも外野から見ている人の方が的確な判断ができると言われる。盤面を指し手よりも高いところから見ることで全体像を把握できるからだろう。勝負に挑む指し手の緊張感やストレスとは無縁の外野勢は心に余裕があることから、冷静な判断ができ、新たな知恵が生まれるのかも知れない。

 老子道徳経に「驟雨(しゅうう)は日を終えず。」という言葉がある。激しい雨も止むときが来ると言うことだ。自暴自棄に陥るような心理状態にあっても、必ず回復の術を見つけることは出来る。一歩退いてその問題を見、心を安らかにしてその課題と向き合えば、今まで見えなかった景色が見えるに違いない。