あれこれオーストラリア探訪「国家の品格」

 Date:2013年07月01日11時34分 
 Category:地域(海外) 
 SubCategory:あれこれオーストラリア探訪 
 Area:指定なし 
 Writer:三陽生人
2006年のベストセラー「国家の品格」。数学者でお茶の水女子大学教授の藤原正彦氏
の著作によるものだ。その中に、英語についての記述がある。手元に本がないから、
詳細な記述はわからないが、覚えてるところでは、小学生には英語を勉強させる前に
日本語をしっかり勉強させるべきであること。英語が話せる人間は増えたものの、伝
えるべき中身のない人間ばかりとなり、かえって日本人の程度の低さを露呈する結果
を招いており、憂慮すべきである事などが書かれていたように覚えている。

先日、我が家を訪ねてくれた京都外大で英語の先生を目指している学生で、今はワー
キングホリデーでシドニーに滞在している21歳の若者が同じような事を言っているの
に驚いてしまった。

彼は普通にオージー(オーストラリア人)とは英語で話せるものの、日本の歴史や政
治、経済、あるいは日本国内の観光名所などを聞かれても、期待に応えられるだけの
知識がないことに愕然としているそうだ。これまでは、必死になって会話力を身につ
けようと語学学校に通い、Meetupという出会いの場でオージーと仲良くなっては英語
力の強化に励んできたが、そんなことよりもっと大切な事が学びたいと、最近は毎日
のように我が家の門をくぐっている。

恥ずかしながら我が娘も、イギリス留学中に同じような悩みを抱えていたが、その時
に流行となったこの本を読んで、私は、まさに我が子のことであると読み入ってし
まった記憶がある。

とはいえ、グローバル化する社会にあっては英語力が必要なこと、しかも早くに身に
つけた方が圧倒的に語学力は有利なことは間違いない。オーストラリアにいて実感す
るのは日本人があれだけ長期間英語を学校で学んでいるのに会話ができないのは「異
常」だということだ。

ここにいると、普通に数カ国後を話せる人が数多く存在することに驚かされる。アラ
ビア語、フランス語、ドイツ語、英語を操り、今は日本語を勉強中の男性、マンダリ
ン(中国語),タイワニーズ(台湾語),日本語を話す女性、二年間、日本語を語学学校で
学んだだけで、日本に行ったこともないのに私が日本人と間違えてしまったインドネ
シア出身の男性など、私の周りだけでもかなり居る。しかも、尋ねてみると、驚くこ
とに彼らがその語学力を習得するまでに、多くの時間を要していないという事だ。日
本の学校教育で教える英語授業のあり方の何処に課題があるのか、考えさせられるの
は私だけではないだろう。

小学校では英語教育よりも国語力の強化が先であると藤原先生の同著にはあるが、同
時に英語力を身につける力が日本人には備わっていると信じたい。