あれこれオーストラリア探訪「漫画の効用」

 Date:2013年07月08日11時06分 
 Category:地域(海外) 
 SubCategory:あれこれオーストラリア探訪 
 Area:指定なし 
 Writer:三陽生人
私は漫画をあまり知らない。テレビで放映されていたものは少しくらい知ってはいるが、いわゆる漫画本に連載されていたようなものはほとんど知らない。私が子供の頃は、「漫画ばかり読んでないで勉強しなさい!」というのが勉強しない子への親の常套句だったように思う。親に叱られるからというわけではなかったが、あまり興味を覚えなかったためか、子供の頃から漫画本にはほとんど親しんでいない。

さて、オーストラリアでの話だが、ここでは漫画本の話を知らないと、特に若者たちの会話について行けない現実がある。「ナルト」「ドラゴンボール」「聖闘士星矢」など、彼らの会話の中にはこれらのキャラクターがどんどん登場する。内容を少しでも知ってさえいれば、友達もすぐに出来て、英語力に多少の難があっても会話を楽しむことができる。そこを入り口に会話の内容は広がりを見せ、会話の恐怖も薄れていく。

先日我が家を訪れたオージーの女性は口を開けば日本の漫画のことばかりを話す人で、お気に入りの『銀魂』(ぎんたま:空知英秋による日本の少年漫画作品。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2004年2号より連載中)の話題ともなれば、一人で笑い転げて喜んでいた。一緒にいた英語は話せないが漫画好きな女性は、彼女との会話で盛り上がっていたから不思議なものだ。私はといえば、その会話に入れず辛いひと時となってしまったが…。

日本の古武道を習い、薙刀をやっているという彼女。これも漫画の影響なのか、「忍者」が好きといい、FacebookのIDは「くノ一」を名乗っている。
そんな彼女だが、一方では難易度が高いTESOLの資格を持ち、来年からはシドニー大学で学び、将来は日本で英語の教師をしたいという。

オーストラリアには日本文化に興味を持つ人が多い。奈良や京都の歴史に触れたいと思っている人、日本の伝統芸能や技術に興味を示す人も多い。そして、漫画も同時に日本文化を代表するもののひとつとして、異国における興味の対象なのである。

先日出会ったオージーの若者は漫画を観て日本語を勉強していると言っていた。恐らくそれが原因だとは思うが、彼の使う日本語は漫画の登場人物が話す言葉そのもので、どう聞いても一般人が使う日本語からは程遠いものだった。しかし、彼らは確実に漫画を通して日本に触れ、日本文化や日本人そのものに親しみを感じているのである。

今シドニーに居て思うことがある。それは、将来海外で第二言語を学ぼうとする人は、日本で下手な勉強をするよりは、日本の漫画に親しんで欲しいということだ。「勉強も大事だけど漫画もちゃんと読んでおきなさいよ」…海外でのこの実態が分かれば、こう語る親が増えるのも、遠いことではないかもしれない。