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【四字熟語の処世術】吾唯足知(われただたるをしる)
Date:2018年01月09日11時01分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
新しい年が明けた。平成の元号もあと一年と少しで変わる。今年の秋頃には新たな元号が発表されると聞く。果たしてどのような名となるのか楽しみだ。
さて、昨年は
「忍之一字」(にんのいちじ)
の一年だった。新たに始めた事業を軌道に乗せるのに相応の時間がかかることは私にも分かっていたが、歳も歳だけに
「一刻千金」
との思いが忍耐の2文字を忘れさせ、はやる気持ちが焦りを生み、ストレスだけを溜めこんで、結果、体調を崩してしまった。一ヵ月ほどで回復したが、心に刃を向けるには、心の鍛錬が必要であると改めて感じた。
「千客万来」(せんきゃくばんらい)
、商売繁盛の為、スタッフが敢えて心を鬼にする
「良薬口苦」(りょうやくはくちににがし)
の金言、
「侃侃諤諤」(かんかんがくがく)
の議論を
「罵詈雑言」(ばりぞうごん)
の如くに受け止めはしていないか、常に心に問うのも心の鍛錬である。次への糧とし向上を図るためには大切な事、まさに経営の要諦である。
事を進めるに本末終始のあることは大学の
「致知格物」
の教えに学んではいるが、知ることと出来ることとの間には計り知れない隔たりのあることも、この歳になれば充分に分かっている。「論語読みの論語知らず」という言葉は、まさに自分のような者に向けられたものだと思うからだ。
「有為転変」
として瞬時も止まることなく流れる時間。気づけばすぐにも
「初秋涼夕」
の声が聞こえそうで、怖くもある。
「大器晩成」
と嘯いて小器を顧みずに時を無駄にしては、自分だけでなくスタッフの願いまで
「泡沫夢幻」
に帰す結果を招いてしまう。若いときは気にもしなかった時の流れだが、今は心の隅にいつも居座ってこちらを視ている。
「吾唯足知」(われただたるをしる)
…京都・竜安寺にある蹲踞(つくばい)に刻まれている言葉だ。知足の戒めである。思うに、人は誰しも幸福でありたいと願っている。しかし、幸福とは何か、と深く考える人はあまりいない。幸・不幸は与えられた環境の違いで生じるのではなく、『人との比較』から生じる。ただ足る事を知り、与えられた環境に感謝し、不足を思うことなく生活しているとき、人はすでに幸せを感じている。その幸せを失わない秘訣、それは自分を他人と比較しないことだ。他との比較が人を不幸にし始める。
今年はこの四字をもって一年の戒めとしたい。
「一汁一菜」(いちじゅういっさい)
の素食を常とし、
「良妻賢母」
でありたいと願う娘家族と共に、今ある幸せを幸せと感じることの出来る一年でありたいと思う。