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【街景寸考】聴覚過敏のこと
Date:2019年06月05日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
マンションなどの集合住宅は、それぞれの居宅が上下左右に接している場合が多いので、騒音トラブルが発生しやすい環境にある。騒音トラブルで最も多いのが、上階の子どもが床を頻繁に走り回ることで階下の住民に迷惑をかけるという例である。次に多いのが深夜に複数人で騒ぎながら酒を飲んだり、麻雀をしたりするというような例だ。
こうした騒音が長引けば、その居宅と接している居住者は平穏な生活が脅かされることになるので、苦情を言い立てるのも十分理解できる。ところが昨今は、生活音の範囲だと思われる物音の場合でも、「うるさい」と感受して苦情を言い立ててくる居住者が増えているという。ドアの開閉音や風鈴の音まで「うるさい」という例もあるというから驚く。
騒音トラブルは集合住宅だけのことではもちろんない。幼稚園や保育園から聞こえてくる園児たちの声が「うるさい」と言う例もあれば、「運動会は園内でしないでほしい」という訴えも少なくない。わたしが小学生の頃に行われていた夏休みのラジオ体操も、昨今では「早朝からうるさい」という苦情があちこちの近隣住民から上がっているため、実施期間を短くしたり、すべてを取りやめたりする例は珍しくなくなってきた。
少なくとも昭和30年代の頃までは、ラジオ体操が「うるさい」という地域住民からの苦情を聞いたことはなかった。むしろ、小学生の父母はもちろん散歩がてらの高齢者たちまでが加わり、一緒にラジオ体操をしている光景があちこちの広場や空き地で見られた。子どもたちには寛容な時代だった。
聴覚過敏という言葉がある。普通の人なら我慢できる物音でも、苦痛を伴う異常音として聞こえてくる症状のことだ。聴覚過敏は先天的な場合と、病気やストレスの蓄積によって後天的に発生する場合がある。ストレス社会とも言われる現代、聴覚過敏のようになる人が増えてきたのは、このストレスと無関係ではないように思う。
ストレスは、競争社会や管理社会での複雑な人間関係に起因している場合が多いそうだ。従って、過敏になるのは聴覚だけではない。モンスターペアレントやモンスターカスタマーなど異常とも言えるクレーマーの出現も、こうしたストレスによって生じる神経過敏が背景にあるのではないかと思うことがある。
ストレスによる神経過敏や感覚過敏を和らげるには、誰にでも笑顔で接するよう努めていくしかない。不器用な笑顔であっても自分なりに装うことで、周りも同じような変化が生じてくる場合が多い。笑顔を交し合える関係になることができれば、うるさく聞こえていた物音も段々寛容に受けとめることができるようになること請け合いである。
わたしたち夫婦が放つオナラも、以前はお互いに嗅覚過敏ぎみだったが、ゆるくなってきた肛門をお互いが認め合うことで、臭いにも音にも寛容になることができるようになった。