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【街景寸考】漫画「スラムダンク」のこと
Date:2020年03月04日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
「スラムダンク」(少年ジャンプ連載)という、高校バスケットボールを題材にした熱血感動漫画を読んだことがある。もう30年ほど前のことだ。息子たちがハマって読んでいたのを、たまたまわたし好みのタッチで描かれた漫画だったということもあり、何となく手に取ってみたのがきっかけだった。全31巻の単行本である。
その1巻目は、赤い髪に染めた主人公の桜木花道という不良少年が、一目惚れした同級生の晴子(バスケ部主将の妹)に薦められてバスケットボール部に入部するところから描かれていた。喧嘩だけが自慢の桜木が、まるで勝手の違うバスケットボールに挑んでいく過程に段々興味が湧いてきて、2巻目、3巻目・・とハマってしまった。
最終の31巻目は特に感動し、恥ずかしながら涙が込み上げてきた。インターハイの2回戦で優勝候補のチームとあたり、両チームが死闘を繰り広げる終盤戦のところである。残りの試合時間わずか1分間の展開を、1冊分185頁も費やして描かれている。
両チーム1点差を争う試合終了の1秒前、流川(るかわ)楓という超高校級の選手が相手チームの選手にシュートを阻まれた瞬間、それまで仲が悪く、能力的にも見下していた主人公の桜木にパスをしたのである。流川が桜木に初めてしたパスだった。桜木はそのパスを受け、試合終了と同時にジャンプシュートを決めたのである。
シュートを決めた後、桜木がフラフラと流川のところに歩み寄り、お互いにじっと目を見合わせてから、思いっ切りハイタッチを交わす場面がある。わたしが目を潤ませたのは、この場面である。この番狂わせの試合に、会場は感動の渦に包まれ、晴子をはじめ応援団の面々は大粒の涙を流した。作者はこの場面を、2頁見開きをひとコマにして描いている。
「スラムダンク」の面白さは、筋立てはもちろんだが、描き方の技法にもある。ここぞという画面描写のところでは、スピード線や集中線などの効果線が実に巧く駆使されているので、登場人物のスピード感や臨場感、深い心の動きが効果的に表現されている。加えて、大小巧みなコマ割の演出によるところにもある。
大学生だった頃、わたしは「あしたのジョー」(少年ジャンプ)と「巨人の星」(同)だけは毎週欠かさず読んでいた。主人公の矢吹丈(ジョー)や星飛雄馬の生き方に感動し、憧れを抱き、目を凝らしながら頁を追っていた。ところが振り返ってみると、目を潤ませるほどの感動をした記憶がなかったことを、今あらためて思う。
「スラムダンク」は主人公の桜木だけでなく、他の選手たちがそれぞれ部活を通して「今を懸命に生きようとする姿」を描いている。桜木だけでなく流川をはじめ同じチームメイトの生き方に、わたしの息子たちも感銘を受けたに違いない。また、長々と終わりの見えないスポーツ漫画の連載が多い中で、「スラムダンク」の終わり方は潔く、実に痛快である。