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【街景寸考】この国の官僚のこと
Date:2020年12月16日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
官僚を希望する学生が年々減っているようだ。東京大学新聞の調査によると、その理由として長時間労働に対する忌避感が最も多く挙げられていた。モリカケ問題で表面化した財務官僚の公文書の改ざんや虚偽答弁などの不祥事も影響していると思っていい。更には、内閣人事局による官僚支配という体制にも抵抗を覚えている学生がいるはずだ。
国民が抱いている公務員像は、午後5時半を過ぎると早々に職場を後にするというイメージだが、同じ公務員でも霞が関で働くキャリア官僚の場合は、毎夜11時、12時まで働いている。特に国会会期中は国会対応に追われ、帰宅時間は午前2時、3時過ぎになるのが通例だと言われている。「ブラック霞が関」と言われる所以である。
官僚の国会対応とは、国会議員から出された質問通告に対する答弁書を作成する業務が主になる。官僚はこの質問通告が届けられるまで省庁で待機し、通告書が届き次第答弁書を作成しなければならない。この答弁書を読み上げるのは総理や各大臣なので、上司の了解が得られるまで書き直されるはずだ。つまり、政治家へのつまらない忖度をも含めて、国会を事実上運営しているのは裏方を担っている官僚だと言っていい。
わたしが現役のサラリーマンだった頃、仕事の関係で建設(現在の国土交通省)官僚と打合せをすることが何度かあった。初めて訪問時間の打合せをしたときの驚きは、今でも忘れない。その官僚は電話口で「それでは10時に建設省で」と当然のような口調で言ったので、わたしはてっきり午前10時のことだと思っていたら、夜中の10時だったのである。
次に驚いたのは、都内のホテルから建設省までタクシーで乗りつけたときのことだ。タクシーから降りたわたしは、周囲の光景に思わず目を奪われた。中央官庁が集まる霞が関周辺のビルは、すべて煌々と明かりを灯していたのである。わたしはその壮観な光景を見ながら、それらの明かりが日本という国を動かしている光源体のように思えた。
同時に、わたしはこの光景を目の前にして、国家、国民のために昼夜を問わず懸命に働く官僚たちのことを想像し、思わず彼等に感謝と労いの言葉を心の中で発していた。官僚の幹部候補生になるには国家公務員採用総合職試験に合格しなければならない。わたしのような凡人では何回受けても合格するのが難しい試験だ。
ところが今、前出のようにキャリア官僚を希望する学生が減っている。それだけでなく、官僚の身分を捨てて民間に転職する例も増える傾向にある。「沈没していくような日本丸には乗りたくない」と思っている官僚までいるというから驚く。こうした背景には、政治や政治家の劣化だけでなく、官僚自身の劣化も根っこにあるような気がしてならない。
難しい試験に合格して晴れてキャリア官僚になり、国の大事な仕事をする立場に立てば必然優越感と同時に大きな責任感も生まれてくるはずだ。明治以降、官僚たちはこの二つの思いを抱きながら実直に国民・国家のために仕事をし、見事な国づくりに貢献してきた。
今再び、この実直な精神を持った官僚たちの働きぶりを期待したい。そのためには、国の未来を託するに足る大局観を持った賢明な政治家も不可欠になる。