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【街景寸考】女性アスリートのユニフォーム
Date:2021年08月11日17時08分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
「ビーチハンドボール」というスポーツがあることをネットニュースで知った。「ビキニパンツが短すぎる」という見出しに惹かれてのことだった。見出しはノルウェーのビーチハンドボール女子選手たちの抗議の声だった。
ビーチバレーのことは知っていたが、ビーチハンドボールも同じ「ビーチ」なのでハンドボールに似たスポーツであることは想像できた。ビーチと言えばビキニ姿が直ぐ連想できたので、彼女たちの「短すぎる」という抗議の意味もなんとなく理解できた。
思ったとおり抗議の理由は、「競技をするのにビキニをユニフォームにする必要があるのか」「競技中に性的対象として見られるのは不愉快」というものだった。ノルウェーのビーチハンドボール連盟も、彼女たちのこの抗議に同調し「快適にプレーができるユニフォームが着用できるよう国際規定の改変を目指して闘い続ける」と表明している。
この国際規定では「ビキニパンツを着用しなければならない」と定められ、「脚の付け根に向かって切り込んだ形のぴたりとしたビキニパンツで、側面の生地の幅は最大10cmとする」という形状まで細かく決められている。更に驚いたのは、先頃行われた競技大会でノルウェーの女性選手がビキニではなく短パンを着用したことで、国際ビーチハンドボール連盟から罰金を課されていたのである。
まるで中学校か高校のブラック校則を想像させるような規定だ。ブラック校則の場合はスカートの丈を短くしてはならないというものだが、ビーチハンドボールの方は「短いビキニにしなければならない」というものなので奇異に感じないでもなかった。
その一方で、わたしはこの女性選手たちのこの抗議に対して多少違和感を覚えたのも確かだ。というのは、夏場の海水浴場の光景を見ても明らかなように、女性の水着は明らかに肌の露出度を高めてきた歴史を辿っており、現在に至っては超ビキニを着用することに若い女性たちは何の抵抗もないのだろうと思い込んでいたからだ。
もっとも、女性アスリートと海水浴場で泳ぐ女性たちを同じ次元で捉えること自体が間違っているのかもしれない。今後、性的対象として見られるユニフォームは各競技にこのような抗議や主張が波及していくのかもしれない。今回の東京五輪でドイツの女子体操選手がレオタードではなく、足首まで覆ったボディスーツを着用したのもその兆候である。
彼女たちのこのような抗議の直接的な背景は、競技中の体の一部をアップした写真を無断で撮影し、SNS上に投稿・拡散するという変態まがいの輩が増えてきたからである。こういう卑劣な輩を排除していくにためには、法改正をしてでも厳しく取り締まっていかなければならないことは論をまたない。
これまでスケベ心を隠し、紳士的な精神を保ちながら彼女たちを眺めてきたわたしも、自戒の念を込めて痩せ我慢を強いていかなければならなくなった。「女性アスリートのユニフォームは彼女たち自身が動きやすく快適に感じられるものであるべき」という考えに同調していくしかない。そういう時代になった。