街景寸考「アイタタタッ」のこと

 Date:2023年07月10日09時33分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 子どもの頃、近所のお年寄りが肩をゆっくり後ろに回しながら、顔をゆがめて「アイタタタッ」と嘆いている様子を見てきた。そんな様子を見るたびに、年寄りになると誰でも肩がこるようになるのだと思っていた。

 ところがわたしの場合は、年寄りの仲間入りをして何年も経っているのに肩がこって辛い思いをしたという経験がなく、更には周りにいる年寄り仲間からも「肩がこって」というような困りごとをほとんど聞いたことがない。要するに、年寄りになると肩がこるというのは単なるわたしの思い込みでしかなかったのだ。

 どういう日常を過ごしていると肩がこるようになるのかよく分からないが、パソコンに向かって仕事をしている人たちが首筋や肩がこって悩んでいるというのはよく聞く話である。運動をしているか、していないかでも関係しているのは周知の事実である。  

 つまり、老若男女を問わず同じ姿勢を続けていたり、パソコンやスマホに向かって目を使い過ぎたり、あるいは何の運動もしないでいると、首筋や肩の筋肉が緊張して血行を悪くし、肩こりを引き起こすことになるということらしい。

 ところが、わたしも現役時代はパソコンを使って仕事をすることが多かったが、なぜか首筋や肩がこわばったという経験をしたことはなかった。肩がこるような体質ではなかったのか、それとも鈍感だったということだったのかもしれない。思うに、若い頃からずっと野球やソフトボールを続けてきたことが関係しているのかもしれない。

 もっとも、肩がこることはないが腰痛は強弱を繰り返しながら何年も続いている。原因ははっきりしている。練習や試合でバットを振り回してきたからだ。腰痛がひどいときは、上半身を軽くゆっくりと左右に何度も繰り返し半回転させるのである。この方法は知人から教わったのだが、効果があるようなのでずっと続けている。

 少し気になっているのは背中だ。普段はなんてことはないが、たまに冷やかしでマッサージチェアに座ったときにその恐怖が突然くる。ローリングが背中を這うところにくると、激痛が走るのである。最初は「ウウッ」と唸って少しだけ耐えてみるが、直ぐに「アダァ!」と悲鳴をあげてマッサージチェアから飛び退くのである。何度試しても、そうなる。

 野球肘(右ひじ)の軽い痛みを除けば、今のところ他の部分は問題ない。問題はないのに、座った状態から立ち上がるときや、車の運転席から降りようとするときなどに、思わず「アイタタタッ」と痛さに耐えようとする声が勝手に出るようになった。大して痛さを感じなくてもである。特に古希を過ぎた辺りからはひどくなってきた。

 最近は、立ち上がる前から「アイタタタッ」が出てくるようになった。更に、「アイタタタッ」の前に「ヨイショ、ヨイショ」と弾みをつける掛け声も。いわゆる、ルーティンのような感じになった。

 この新バージョンは、ジジイになった自分と共存していく心境の現れなのかもしれない。