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【街景寸考】トランシーバーで思ったこと
Date:2012年11月22日10時14分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
トランシーバーのことである。道路工事の現場などでガードマンが、トランシーバーを持って、もう一人のガードマンと交信している光景をよく見る。「白いワゴン車がまもなく通るから、通ったらそちら側の車を通して下さい。ドーゾ」と言えば、「はい、了解です」というような交信をやっている。
その交信を見ていておもしろいと思うのは、センテンスごとの最尾で、必ず「ドーゾ」と言うところである。普段の会話では、こういう言い方はしないので、その違和感がおもしろいと思った。
普段どおりの喋り方をしてもいいのにと思うのだが、あえて堅苦しく「ドーゾ」を繰り返すのだ。そして、この疑問は直ぐに理解できた。おそらく自衛隊か警察あたりで使われてきたのが、警備会社でも使われるようになったのだろうということ。そして、伝えなくてはならない重要な情報が、相手に確実に伝わっているかどうかを確認するためには、確認するためのサインが必要となり、そのサインが「ドーゾ」なんだということが分った。
「こちらの伝えたいことは以上だ。そちらは理解できたのかどうか返事をしろ」というのが「ドーゾ」という訳になる。トランシーバーは、相手に話すときは、通話ボタンを押してないと自分の声は相手に届かない。相手の話を聞くためには、通話ボタンから指を離していなければならない。双方が通話ボタンを押したままでも、双方が通話ボタンから指を離したままでも、交信は不可能だ。
つまり、双方が、トランシーバーを通してスムースに会話をしようとするなら、通話ボタンを押したり離したりする行為を、都合よくお互いが譲り合っていかなければならないのだ。普段の会話では、こうしたトランシーバー型の会話はありえないが、口喧嘩をするときなんかは役に立ちそうだと考えた。
トランシーバーで「お前は仕事がいつも遅いんだよ。どーぞ」「ばかやろう。お前から言われたくねぇーんだよ。どーぞ」という口汚い応酬をしていても、応酬するには相手が言い終わるまでは喋れず、終わるまでじっと聞いていなければならない。自分が喋るときは、相手に通信ボタンを離していてもらわなければならない。従って、そのうち段々アホらしくなってくるに違いないのだ。お互いがこの律儀なまでの操作を繰り返えしているうちに、そうなってしまう。
今、このトランシーバー型の会話で、領土問題を抱える日本と中国、日本と韓国のトップ同士を話させてみたい。