【街景寸考】再・憂鬱な季節

 Date:2013年08月14日09時38分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 以前、本欄で職場の健康診断が迫っていることを<憂鬱な季節>と題して書いた。今回はその欄の追加である。追加するのは、検便を採取する煩わしさのところである。このウンチを採取するのに毎年てこずっている。どんな要領で人は採取しているのか一度見せてもらいたいと思うが、そういうわけにもいかないので未だにわからない。

 小学低学年のころは良かった。自宅前で古新聞を広げてウンチをし、ウンチの山を前にしてどの角度からも難なく採取することができた。今となってはその自在な方法でするわけにもいかない。で、狭いトイレの中で窮屈な思いをしながら採取することになる。これが毎年簡単にはいかないでいる。しかも、以前は1本でよかったのに最近は2本になった。

 自分が考えた採取法はこうだ。まずトイレットペーパーを便器の前方に敷く。傾斜面になっているところだ。次に尻を普段の位置より前にずらさなければならない。敷いたペーパーの上にウンチを乗っけるためだ。昨年この方法で試して失敗した。ウンチがペーパーごと水溜まりにずり落ちてしまったのだ。ペーパーが便器に張り付き、ウンチがペーパーに乗っかればウンチは落ちないという計算があったが、見事外れた。大事なウンチだった。

 こういうこともあろうかと、予備を肛門入口に残しておいた。今度はペーパーを左手に乗せて直接受けるという方法で試みた。尻を浮かせたままでないとできない芸当が要求された。両腿にかかる負担もがまんしなければならなかった。で、これも失敗した。思いのほかウンチが硬かったせいで、コロコロとペーパーから転げ落ちてしまったのだ。なけなしのクソだった。

 この日は健康診断当日だったので、結局何日か前に採っておいた1本だけを提出することにした。その1本は、カミさんには内緒で冷蔵庫の奥にしまっておいたものだ。白衣を着た受付の女性は「1本だけですか」と言って事務的に受け取った。事務的だったことが私の緊張を和らげてくれた。

 その健康診断が今年も近づいてきた。手ごわいバリュウムと検便にまたまた挑戦しなければならない。やはり憂鬱である。