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怪しい日帰りバスツァー
Date:2012年03月16日11時47分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
カミさんが何かの懸賞で由布院日帰りバスツァーに当たってしまった。一人でいくのはつまらないからということで私も職場の有休を利用して行くことにした。連れが参加するには参加費1万円を要した。二人ともこの類のツァーは始めての経験である。参加者の大半は60代前後の女性で占められていた。
博多駅前を出発したバスは、九州道に入ったかと思うとすぐに鳥栖インターで降り、近くにある商工団地の中にある店舗の駐車場に止まった。参加者は、戸惑う暇もなくその店舗の中に吸い込まれていった。最初に首飾りが数十点ほど展示された部屋に通され、そこでひとしきり展示物の説明があり、次ぎは椅子が並べられた部屋に導かれ、黒いネックレスを首にかけると肩こりなどが良くなるという講習会が行われた。段々、これからの店舗内での展開が予測され、不満や不安がもたげてきた。
案の定、最後は大勢の売り子(売り年増?)が定置網の中で戸惑う魚を簡単に捕まえられるような大部屋に押し込められた。その中で私も売り子の一人に拘束され、商品説明の時間に耐えなければならなかった。無事開放されるまで1時間15分ほど都合よく埒された格好だった。この間、このツァーが「売り込みツァー」以外の何ものでもないことを確信した。そう言えば連れの1万円の参加費も高過ぎる。無料招待ではない。この1万円で本当は二人分だった。
更に、バスが九州道から大分道に入ってまもなくのことである。バスガイドが、どこかの土産売場に寄ることになる商品の売り込みを始めたのだ。「彼女も一味」だったのかと、閉口とした。徹底した「売り込みツァー」だ。ところが参加したおばちゃんたちは平気の風である。変わりなく姦しく喋り、喋りながらよく食べた。どこかの土産売場に着けば、土産品を両手に抱え、バスとの間をせわしなく行き来していた。
集団催眠ではない。彼女たちはちゃんと品定めをし、値交渉もしている。むしろ、この無料招待ツァーを逆手にとっているようにも見えた。参加のおばちゃんたちも主催者側も、市場経済に揉まれた屈強な神経をもっている戦士なのだ。自分たち夫婦を省みた。そして、この戦場ではとても太刀打ちできない社会的弱者の類であるかということを痛感した。
それはどうでもよいとして、確かなことは、私たち夫婦にとってこのツァーが職場の有休を使ってまで行く価値のないものであったということだった。