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【街景寸考】飼いネコの近況
Date:2014年02月05日10時05分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
久しぶりに我が家のネコの話である。前にも話したが、名前は「ソフィ」である。メスだと思って付けた名前だったがオスだった。三男の息子だけは何故か「武蔵」と勝手に呼んでいる。長女が二十歳のときにどこかから拾ってきたネコである。生まれて間もないネコのようだったが、痩せこけて汚かった。
あれから六年経った。ネコでも六年経つといっぱし家族の一員になったような振る舞いをする。自分が拾われてきたネコだという自覚がまるでない。自覚がないから恩義がどこにも見られない。家の中を威風堂々と歩く。
炬燵に入りたいときは、一声「にやぁん」と鳴けば、誰かが炬燵布団を上げて通り道を作る。ベランダに出たいときも同じ要領で鳴けば、カミさんか息子が執事のように駆け寄り、サッシを開ける。頼むというより命令調のように見えるときがある。
腹が減ったときは、「にやぁぁーん」と甲高い、長めの声で鳴いてくる。カミさんがその要求に応えないときは、足元や膝にまとわりつき、猫パンチを繰り返す。それでも餌を貰えないと見れば、カミさんの顔をじっと見詰め無言の圧力をかけてくる。餌場のところまで行き、「男の背中」を静かに見せ続けることもある。嫌みなデモンストレーションである。
彼は、当方に決しておねだりをすることはない。餌をくれない奴だと知っているからだ。かといって、当方が彼の糞を始末する係りだということを、おそらく知らない。
威張っているように見える彼だが、小さな孫たちが大の苦手である。休日などで孫たちが家に来たときは、怯え、慄き、身を隠す。孫たちが居るあいだ、トイレ以外は出てくることはない。トイレが我慢できなくなると、鼠のように部屋の隅をびくびくしながら足早に通り抜けて行く。いつもの威風堂々はどこかへ行き、へっぴり腰となる。
孫たちが帰る際がおもしろい。まだ孫たちが玄関口や玄関先にいるあいだは決して顔を出さない。車に乗って「バタン」とドアがしまる音がしても現れない。現れるのは、アクセルが踏まれ、車の動くエンジン音が消え去ってからである。決まっていつもそのタイミングなので感心している。孫たちを天敵だと信じているようである。
我が家で飼うネコの近況である。ネタ探しに困ったのでまた登場させてもらった。