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わたしゃ、今が一番幸せです
Date:2012年04月03日10時17分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
50も半ばを過ぎてくると、自分のことより連れあい(カミさん)の健康のことが心配になってくる。カミさんが元気でいてくれないと、自分の余生が立ち行かなくなることを本能的に察するからだ。従って、言葉も態度も急に優しくなる。「エアコンを入れないと熱中症になるぞ」とか「もう一枚着ないと風邪ひくぞ」と、それまでカミさんに対して使ったことがないような言葉が、恥ずかしげもなくポンポン出てくる。一見、愛情表現のように見えるが、そうではない場合が多い。
60を過ぎて妻に先立たれた知人の話を思い出す。「カミさんが死んでしまったあとは、色々なモノが何の価値もなくなったように見えてしまう」と。そして、妻が自分にとってあまりにも大きな存在であっことを知り、「もっと大事にしておけばよかった」と後悔する。
逆はどうか。亭主に先立たれた妻の場合である。2,3年くらい前だったか、NHK番組の「のど自慢」を見ていたときだ。歌い終えた80過ぎのおばあちゃんとアナウンサーとの短い会話の中で、「連れ添ってきたご主人が亡くなられてお寂しいでしょう」とアナウンサーが気遣う場面があった。と、そのおばあちゃんはすかさず「わたしゃ、今が一番幸せです」と元気一杯に応えた。もちろん、会場は爆笑の渦となった。
この爆笑でおばあちゃんの薄情ともとれる本音を薄めることができたが、同調する妻達はたくさんいるに違いないと思った。実際、亭主に先立たれた妻たちの余生は、実にイキイキ、溌剌としているように見える。
亭主族が高齢になっても「妻と共に」元気で長生きしていきたいと思うなら、早い時期から妻を労わり、優しくしていかなければならない。が、自分の場合はときすでに遅し、か?