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【街景寸考】ユマニチュードの応用
Date:2014年06月18日09時28分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
NHKのTV番組「クローズアップ現代」を見ていて驚いた。ある方法の下で介護をすると、それまで介護の手が入ると不機嫌になったり、おびえたりしていた認知症の老人がみるみるうちに意識も体力も改善していく様子が映し出されていたのだ。
不機嫌な表情だったのが笑顔になり、「ありがとう」と介護士に礼が言えるようになった。介護をしやすくするよう自ら進んで手足や腰を動かすようになった。それだけではない。ベッドの端に腰がかけられるようになり、遂には両腕を支えられながらも病院の廊下を歩くまでになった。
この介護法の種を明かせばこうだ。まず寝ている患者の視界に介護者が入り、近づき、見詰め、話しかけ、そして触れながら介護を行うというものだ。認知症の患者に対峙するという視線ではなく、患者の人格を尊重しながら介護を行うという精神が重要だと言う。そこから患者との信頼関係が生まれ、患者は人間としての尊厳を取り戻し、奇跡的な回復につながっていくということである。
この介護法はフランスで生まれたもので、「ユマニチュード」と呼ばれていた。ただ、この番組を見ながら驚きはしたが同時に抵抗感も少しはあった。それは日本の介護現場でもこれと似たような介護が早くから行われていたはずだと思ったからだ。義父が入院したときにも「ユマニチュード」のような介護が実践されていることを観察してきたつもりである。なぜ同じような介護をしながら効果が違ってくるのかよく分からない。もし介護の徹底ぶりの差からくるものであるとするなら、それは介護士の待遇や人手不足、人材不足が背景にあるのではないかと推察するが、正確なところを知ってみたい。
話を少しそらす。この「ユマニチュード」の理念を介護の現場だけでなく、親と子、上司と部下、先生と生徒などの関係においても実践したら良いのではないかと考えた。そうすれば現代の複雑な人間関係も大抵改善するように思えたからだ。いじめや孤立化が減り、閉じこもりや鬱病なども減っていくのではないかとも思った。
早速、小生もこの「ユマニチュード」を自分なりに実践してみたくなった。まずはご近所の爺さんや婆さんたちを相手に始めようと思う。若い女性の場合は難しそうだ。「近づく、見詰める、触れる」のところでは変態か何かと間違われるかもしれない。身近なカミさんも考えたが、季節はずれの発情か何かと勘違いされると困るので考え直した。
冗談はともかく、この「ユマニチュード」の理念を日常に活かしていきたいと思う。