【街景寸考】子ども電話相談の面白さ

 Date:2014年08月13日09時21分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 NHKラジオで「夏休み子ども科学電話相談」の放送をやっている。何とはなしに聞いていたら段々面白くなってきた。この番組は動植物、昆虫、天体、心と体に関する子どもたちからの質問を受け、大学教授などの専門家が答えるという番組だ。

 子どもたちの質問自体が面白い。「昼は何で星が見えないのですか」「セミはなぜ鳴くのですか」「人間はなぜ嘘をつくのですか」「ワライタケを食べると本当に笑いがとまらないのですか」等々、大人たちだったらまず疑問に思わない質問ばかりである。いかにも子どもらしい質問だが、かといって普通の大人には、どれひとつ的確に答えられない質問ばかりである。損得と打算を軸に生きている大人たちには、こうした視点からの疑問は湧いてこない。目が濁っているからだ。

 回答する先生たちは、さすがに専門家だけあって、子どもたちの目線に優しく合わせ、分かりやすく受け答えをしている。それでも小学校低学年からの質問になると、平易な説明も限界があるようで、「ウーン、どう言ったら理解してもらえるかなぁ」と苦悩する様子が伝わってきたりする。この辺の苦悩もこの番組の面白いところだ。

 子どもたちとのやり取りで齟齬が生じることもある。例えば「なぜカマキリのメスはオスを食べるのですか」という質問があったときだ。小学1年生の少女からの質問だった。担当の先生はこう答えた。「メスのカマキリは動いているモノは獲物だと思ってしまうので、交尾するために近づいてきたカマキリのオスでも、動けば襲いかかって食べてしまうことがあるんだよ」と。ここまでは大人でも勉強になるものだと感心して聞いていたが、補足した説明を聞いて混乱した。「でも大丈夫ですよ」と言ったのだ。

 オスがメスから食べられて何が大丈夫なんだ、と少女は思ったに違いない。「交尾した後だったら、カマキリの赤ちゃんはちゃんとできますから」というのが「大丈夫」の理由だった。質問した少女は、オスのカマキリが食べられて可哀想だと思う気持ちがあったから、この質問をしたのではなかったか。「種の保存」のことなんか聞いてない。担当の先生はそれを察することができなかったようだ。ましてや「交尾」のことも聞いてはいない。この補足説明は要らなかったのだ。

 しかし、まあ、こうした齟齬が出たりするところも、この番組の面白いところだ。