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「日日是新」
Date:2012年03月31日17時32分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
中高生の頃に習った中国の歴史は、確か殷(いん)という王朝から始まったように記憶しています。殷・周・秦・漢(いん、しゅう、しん、かん)…と何度も声に出して暗記していたような気がします。
その殷を開いた湯王(とうおう)が毎朝顔を洗う時の洗面の器に刻んでいたのが「日日是新」(日々これ新たなり)という言葉です。
「苟(まこと)に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」と刻まれていたといいます。一国の王をして、毎日がスタートラインと思い、常に新鮮な気持ちで政治を行っておられたのでしょう。どんなに時が流れても、決して慢心することなく、初心を忘れまいとした湯王の自戒の言葉です。きっと自分に厳しく徳を以って民を治められた素晴らしい帝王であったに違いありません。
春を迎え、時はまさに新入社員が真っ白な心で世に出る時です。上司や先輩に対する尊敬の念、仕事に対する真摯な姿勢、適度な緊張感は、長く社会の垢に染まって来た人間にとっては、初心そのものであり、これこそ社会人としての基本であると思います。
何故、人は環境に慣れ、人に馴れて初心を忘れ基本を見失うのでしょうか。いつの間にか新人の白色は他の色に染まりはじめ、上司先輩の言葉は耳に入らず、かえって疎んじるようにさえなり、仕事も楽に流れてサボり癖がつき、緊張感は失われて惰性的になって行くのです。
誰もがそうであり、自分も例外ではないことを知っておられたからこそ、湯王は「日々これ新たなり」と自分の心を戒められたのでしょう。
基本の大切さを知り、自分を誇って高くならず、謙虚な気持ちで周りの声に耳を傾ける姿勢は、周りの人の心を和ませ、周りの人の心を摑む、会社にとっては欠く事の出来ない人材へと成長させてくれるはずです。
「稔ほど首を垂れる稲穂かな」とあります。学べば学ぶほどに、経験が豊かになればなるほどに、自分を低く低く出来る人…会社も社会もそうした人を求めているのではないでしょうか。