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【街景寸考】ハローワークのこと
Date:2014年11月12日09時39分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
以前はハローワークのことを職安(公共職業安定所)と呼んでいた。職安という言葉には何となく暗い響きがこもっているように思えた。社会の歯車から落ちこぼれた人たちが、藁にもすがる思いで駆け込んでくるところとだいう印象があったからだ。そうした印象は、学生時代に見てきた記憶からのものだ。山手線高田馬場駅の近くにあった職安は、老朽化して薄汚く、玄関付近にいつも仕事にあぶれた労務者が硬い表情でたむろしていた。とてもこんなところで安定した職業を紹介してもらえるようには思えなかった。
先日、ハローワークに行ってきた。高田馬場ではないが40数年ぶりに見る職安である。用向きは失業保険の受給申請だった。そこでハローワークという愛称が平成5年から使われるようになったことを知った。この愛称が広まるようになってからは職安の印象が良くなったように思える。実際、事務所の雰囲気も明るくなり、どの職員の対応も優しかった。
最初に制度の説明会があった。退職すれば当然失業保険が受給できるものだと思っていたが、そうでないことを知った。求職活動をしているということが前提だった。しかもハローワークが認める求職活動を月2回以上していなければならなかった。ハローワーク主催の就職支援セミナーを受講すれば1回分になるというので、受講することにした。
意外にも、このセミナーで求職する際の大事なことを学ぶことができた。特に履歴書の記載要領のところである。「下手な字でも最後まで真面目に書かないと、根気のない性格だと思われます」と講師は言い切った。目から鱗が落ちた。字を書くのは自分でもうんざりするほど下手だったので、いつも履歴書を書いている途中で嫌気が差し、真面目に書いたことはなかった。若い時に履歴書選考で何度も落とされてきたのは、これが原因だったということが今にして分かった。
更に、「スピード写真は不利です」という指摘にも驚いた。確かにスピード写真で撮ると、人相の悪い写真になった。それでも面接まで辿り着けばという思いがあったので、写真ごときを気にしたことはなかった。ところが不真面目に書いた履歴書に加え、写真のせいで一段と不利な状況にあったのだと思うと、今さらながら複雑な気持ちになった。若い時分にこのことを知っていたらと思ったが、後の祭りである。次回のセミナーは履歴書作成の演習がある。楽しみであるが、またここでも後悔させられそうだ。