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【街景寸考】「団地ともお」に思う
Date:2015年03月25日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
土曜日の朝にときどき「団地ともお」(NHKテレビアニメ)を見ることがある。主人公の小学4年生「ともお」とその仲間たちが繰り広げるリアルな日常を描いたアニメだ。「ともお」たちの単純で鋭い疑問や本音がズバズバ出てくるところが面白い。その疑問や本音に戸惑いながらも、共に悩み、考え、応えようとする家族や近所の大人たちの人情にも癒されている。そうした情景からてっきり昭和の時代だと思っていたら、現在の団地に生きる人々を描いたものだった。
昭和の時代だと思ってしまった理由がもう一つあった。「団地ともお」が住む4階建ての団地のことだ。このタイプの団地は昭和40〜50年代に日本住宅公団(当時)や地方住宅供給公社が供給してきたので、まだ残っている団地はかなり寂れていなければならないのだ。建物の外観も各戸の設備も老朽劣化し、エレベーターもなく、狭い階段は汚れ、蜘蛛の巣も張ったりしているので、新規の入居者はあまりないのが実情だ。
入居している世帯は、高齢世帯が50%を超え、子育て世帯が少なく、空室率が30〜40%という団地もある。特に4階、5階はエレベーターがないので空室が多い。入口附近と階段部分の清掃は当番制になっているが、きちんと行われていない団地も多い。
ところが「団地ともお」に描かれている団地は、新鮮さが感じられ、生き生きと建ち並んでいるように見えるのだ。「ともお」たちの溌剌とした動きがそう見せているのかもしれない。今、このタイプの団地が新しく建てられることはない。
古くなった団地は、マンションタイプへの建て替えが進められている。エレベーターが付き、集会所も管理人室も備えられ、玄関もオートロックになっているので、募集をすれば直ぐ満室になってしまう。畳部屋をフローリングに変え、壁面を塗り替え、キッチンを新品に取り替えるなどの改善を行う団地もあるが、苦戦しているようだ。もちろん解体される団地も少なくない。
せめてリニューアルされた団地は元気を取り戻してほしいと思う。「団地ともお」を見ているとそう思うようになった。元気になるには建物・設備等のハード部分を改善するだけではなく、入居者が元気になるようなソフト部分の改善も必要だ。そのヒントが「団地ともお」に隠れているように思えてならない。