【街景寸考】北陸新幹線報道のこと

 Date:2015年05月06日08時01分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
 去る3月14日、北陸新幹線が富山・金沢―東京間で開通した。東京―金沢を2時間28分で走り、1時間20分も短縮されるようになった。テレビ各局は開業前からニュース番組等で、この話題を繰り返し取り上げていた。そして土曜日に合わせた開業当日はもちろん、翌日曜日まで大量の時間を割いて盛り上げていたが、あまりにも度を越した報道にウンザリし、腹も立った。

 毎週土曜日は辛坊治郎が司会をする報道番組「ウェークアップ」を楽しみにしているが、この日はなんと番組の大半を北陸新幹線の話題で費やし、翌日曜日もTBS系の「サンデーモーニング」を除けばどの局もこの新幹線報道に浮かれ、節操なく時間をつぎ込んでいた。

 「今、東京駅を○○分遅れで出発しました」「あっ、今○○駅を通過しました」「まもなく金沢駅に到着するところです」だのと、あまり意味のない言葉を繰り返し、金沢駅に到着すると、まるで列車が月面に着陸したかのように騒ぎまくっていた。

 どの番組も同じような画面ばかりを映し出すので、「かがやき」か「はくたか」のどちらだったか分からないが、列車の新鮮さをまるで感じることはなかった。停車した駅のホームでいかにも感激しているかのように喋りまくるレポーターたちが、下手な芝居をしている三文役者に見えた。列車名「かがやき」という名称も10年経てば賞味期限が切れてしまいそうだし、「はくたか」も意味不明の名称であり、どこかの酒名のようにしか思えない。

 バラエティ番組か何かで富山・金沢の伝統文化や地元グルメを紹介する番組制作には異論はないが、報道番組で長々と費やすのは止めてもらいたい。それに首都圏からの目線だったことにも抵抗感があった。関西圏の人たちへの配慮が欠けていたのではないか。

 そんなこんなで気持ちが荒れていたのか、「どの局も浮かれやがって、このざまはなんだ」とテレビに向かって大声を上げたら、「そこまで腹を立てることじゃない」とカミさんから一喝されてしまった。

 そう言えば九州新幹線が開業したときも地元各局がはしゃいでいたが、腹を立てていた記憶はない。齢のせいで偏向的な考え方になってきたのかもしれない。こらえ性もなくなってきた。カミさんの一喝は、タイミング良く自分を中和してくれる効果があるのかもしれない。それにしても、あの報道に呆れていたのは自分だけだったのだろうか。