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Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
韓流時代劇にはまっている。韓流を見ていると日本のドラマがどれもつまらなく思えてしまう。気の抜けたビールを飲まされたときのような気分になる。涙の流し方一つとっても歴然とした差がある。韓流の役者は泣く場面で涙がぼろぼろ流れる。日本の多くの役者は、顔をクシャクシャにして大声で泣きわめいているが、肝心の涙が少しも出ていない。一滴の涙も出ていない場合が少なくない。韓流の場合はどんどん涙が流れるので、その顔をいくらでもアップし続けることができる。
韓流の放映本数が多いので、同じ役者が別のドラマで違った役柄を演じているケースをよく見る。そのドラマの役柄になりきり、巧みに演じる演技力に感心し、役者としての魅力さえ感じることもしばしばある。
ところがあまり極端に違う役柄で登場したときは、複雑な心境になることがある。「ホ・ジュン宮廷医官への道」の主人公ホ・ジュン役が、「火の女神ジョンイ」で悪党イ・ガンチョン役になって登場した場合がそうだった。ホ・ジュンは低い身分にもかかわらず幾多の困難を乗り越えながら心医を目指して宮廷医官となり、人々を身分の区別なく医療で救うという役柄だ。一方、イ・ガンチョン役は朝鮮一の陶工を目指す女主人公ジョンイを執拗に画策し、潰しにかかるという超悪党役である。いくらドラマの世界だからとは言え、少し前まで敬愛していた役者が別のドラマで極悪非道役を演じていたら、いくら役柄とはいっても見ている側は器用に割り切ることができない場合もある。その役者から大きく裏切られた気持ちになり、落ち込むこともある。
子どもの頃、同じ思いをしたことがある。正義の使者・月光仮面のおじさんが東映で映画化されたのだが、2、3年も経たないうちに別の映画でその月光仮面役の俳優がギャング役を演じていたのだ。大村文武という俳優だ。彼はその映画の主人公に撃たれて死に、早々と画面から姿を消したのだった。
子どもたちが英雄視していた俳優が、虫けらのような端役で扱われたことに腹が立った。子ども心を踏みにじった大人たち(東映)が許せなかった。子ども向けの映画だからといって、その俳優を軽く見ていたのなら余計許すことができないと思った。
そう言えば、カミさんも結婚当初とはかなり性格の違う役を演じるようになった。