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【街景寸考】屁でひと悶着に
Date:2015年11月04日10時41分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
臭い話になる。屁の話である。屁のことでカミさんとひと悶着あった。つい最近のことだ。居間でテレビを見ながら放った屁が、思いのほか臭い屁となった。カミさんはキッチンにいたので、居間にくる頃には拡散しているだろうと思い、気に留めずにいた。今思えば安易な予測だった。
予測は見事に外れることになった。居間に入ってきたカミさんは、いきなり「何かうんこのにおいがする」と大声で叫んだのだ。においはまだ残っていたらしい。「何でうんこのにおいがするの」とたたみかけてきた。犯人は私以外にいるはずがないという目付きだった。
「うんこじゃないよ。おれの屁だよ、これは」と、うんこでないことを正してみたが、カミさんの怒りがおさまるはずはなかった。「ずっと前にした屁だから・・・」と弁解してみたが、この弁解の効果もなかった。むしろ怒りを助長しただけになった。
カミさんにしてみれば、においの素がうんこであるか屁であるかの違いが問題ではなく、臭いにおいが漂っていること自体が問題だった。物的証拠があるのでにおいの素が自分であることを自供せざるを得なかったが、謝罪までする気はなかった。
カミさんの面前でならともかく、キッチンにいたときに放ったのだから謝罪は不要だと考えた。否、たとえ人前で放つ屁であっても犯罪の類になるものではない。道徳に反することでもない。その証拠に恥じる様子もなく堂々と人前で音を立てて放つ紳士もいる。「何が悪い」という表情をして、付近にいる者たちを一瞥して立ち去る猛者もいる。
「どうしたらこんな臭いおならになるのよ」と、カミさんの怒りはおさまる気配がなかった。臭いにおいを嗅がせてしまったことには済まないという気持ちはあったが、臭さの強弱まで追求される立場にはない。このやり取りの間ににおいは拡散し、実害はすでに去っているはずなのに、カミさんのしかめ面はしばらく解除されることはなかった。
臭さの強弱は何が原因なのか。以前、透かし屁が臭くて、音を伴ったものはあまり臭くないという説を聞いたことがあったが、信ぴょう性があるようには思えなかった。うんこの中をかい潜ってきた屁は臭くなり、先に肛門近くにあったガスがうんこに押されて放たれた屁はそれほど臭くならないという説はどうか。
誰もが一度は考えたことがあるに違いない。