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【街景寸考】ベンチャーズの日本最終公演
Date:2015年11月18日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
ベンチャーズのことを知ったのは高校3年生のときだ。当時は家にテレビがなく、野球の部活で明け暮れ、周りにエレキギターにのぼせる友だちもいなかったので、ベンチャーズのことを知る機会がなかった。通っていた高校の近くにあるアーケード街から流れていたエレキ曲を聞くとはなしに聞いていたが、それがベンチャーズのダイアモンドヘッドだということもまだ知らなかった。
その曲がダイアモンドヘッドであり、作ったのがベンチャーズだということを知ったのは級友と福間の海水浴場に行ったときだった。キャンプファイアーを囲んでいるところで、級友が音響機器を持ち込んでベンチャーズの曲だと言って流してくれたのだ。このときエレキ特有の音調に溶け込んでいく自分を感じながら、聴き逃すまいと懸命に耳を傾けた。
当時、ビートルズもベンチャーズと並んで日本の音楽界に大きな影響を与えていたようだったが、その音楽性や才能の凄さを理解できずにいた。耳にうるさく聞こえていただけだった。苦手な英語で喚いているというのも気に喰わなかった。長髪スタイルも軟弱のように思え、嫌だった。ビートルズはまだ聞くに耐えられたが、ローリングストーンズに至っては、その恰好や狂信的な叫び声に拒絶反応を起こしていた。こうした偏見は、自分が体育会系の人間だったということも一因にあった。
その点、ベンチャーズは髪が短く、演奏する姿も紳士的に思えた。楽器の演奏だけだという点でも、心地良く入り込んでいくことができた。
最近、ベンチャーズのリーダー、ドン・ウィルソンさんがテレビに映っていた。82歳になっていた。最後の日本ツァーとなる公演活動やファンとの温かい交流を収録した番組だった。どの会場も青春を取り戻そうとする高齢者が多く、ベンチャーズを愛し続けてきた顔で溢れていた。「日本は第二の故郷です」。ウィルソンさんがそう呟いたときの表情が印象的だった。
20年ほど前、仕事でハワイに行ったとき、ワイキキ・ビーチから恐竜の背のような山(外輪山)が見えた。その山がダイアモンドヘッドであり、この山を題材にベンチャーズが「ダイアモンドヘッド」を作曲したということを、このとき知ることができたのだった。