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【街景寸考】まだまだ騙せる日本人
Date:2016年03月23日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
振り込め詐欺が跡を絶たない。メディアや銀行、警察などが盛んに注意を呼びかけているというのに、未だに騙され続けている。高齢者はなぜこうも騙されやすいのかと、不思議に思うことさえある。中でもジジイよりババアの方が騙されているように思う。
実を言うと10年ほど前にウチのカミさんも騙されたことがあった。オレオレ詐欺と言われた頃だ。「お母さん」と言いながら、体調を崩したという電話がかかってきたようだった。その声がオーストラリアに留学している息子からだと早合点したカミさんは、思わず「○○くん?」と息子の名前を呼んだのだ。
これほど簡単に騙しの手口に引っかかるケースはあまりないのではないかと思うくらい、直ぐに引っかかった。このときは、心配と不安を抱えながらしばらく話をしていたが、「お父さんと相談をしてみるので」と言った途端直ぐに切れたようだった。私がその場にいなかったらカミさんはもっとパニック状態になっていたように思う。
日本人の場合、日常の中で他人から騙されるようなことはほとんどないので、騙されることに対する免疫性はあまりない。テレビで振り込め詐欺事件を報道しているのを観ている限りでは、観客としての視点があるので自分は騙されないという気持ちになるが、実際に詐欺師からその舞台に引っ張り込まれた場合は、その自信も揺らいでしまいそうだ。
家に一人でいるところを詐欺グループから「母さん、会社の金を使い込んでしまった」「会社のお金を電車の中に置き忘れてしまった。横領と思われる」「お宅の息子さんが痴漢をして捕まっています。示談にするのにお金が要る」等々、あらかじめ周到に用意されたシナリオで攻められると、大抵の者は心配と不安の渦に引きずり込まれてしまうのかもしれない。
そして、困っている息子を何とか助けてやりたいという気持ちになる。世間的に恥ずかしいことをしでかした息子の行為に、早く蓋をしなければという気持ちにもなる。
どこの国でのことだったか、日本人会で川柳大会が催された。そこで一等賞に輝いたのは「だましても、まだまだだませる日本人」という川柳だった。日本人の実直な国民性を詠んだようでもあり、お人好しな国柄を揶揄した川柳のようにも思える。
振り込め詐欺が続き、更に世の中もせちがらくなってくれば、騙されることに対する免疫性は強くなっていく。その一方で日本人の実直さが薄れていくとするなら、それはそれで大変悲しいことである。