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おせっかいや人情は失われてしまったのか
Date:2012年05月14日09時56分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
今年の1月、札幌白石区の賃貸マンションで42歳の姉と40歳の妹が亡くなっているのが発見された。死後1〜2週間が経っていた。姉が先に病死して、その後に一人残された妹が飢えと寒さで息絶えた。妹は知的障害者だったという。早くに両親を亡くしたため、姉妹で力を合わせて懸命に生きてきた。
姉妹の生活が窮地に追い込まれることになったのは、姉の勤める会社の廃業からだった。姉は必死に求職活動を行っていたが、自身も病に蝕まれた。その間、地元区役所に生活保護受給の相談で数回訪れていたが、役所は「受給申請の申込みがなかった」という言い分以上の対応をしなかったためか、姉妹を助けてやることができなかった。役所の会見をテレビで見たが、誠意や後悔を少しも感じ取ることはできなかった。人間関係の希薄な大都市では、社会的弱者の孤立はそのことだけで十分悲劇である。その弱者を孤立死から守ってやれるのは、役所以外にどこかあるのだろうか。
まだ日本人の多くが貧しかったころ、貧しかったがゆえに、お互いが助け合ってきた。自然に生まれる相互扶助があり、そこにはおせっかいやきのおじちゃん、おばちゃんが必ずいて親身に声を掛けてきた。東北震災での避難生活の場にも、そのころのような日本があったに違いない。もしこの姉妹が、その傍らで生活をしていたとしたら、孤立死は避けられたように思う。
華やかな商業施設や立派な住宅が建ち並ぶ都市は創られるが、地域の人たちが自然に集まり、人情を交換する場があるようでない。おせっかいや人情が自然に生まれてくるような街づくりを切望したい。このままでは、孤立する弱者はまだまだ増えそうだ。