男も愛嬌、「笑う門には福きたる」

 Date:2012年05月21日09時57分 
 Category:エッセイ 
 SubCategory:街景寸考 
 Area:指定なし 
 Writer:大昭寺いさじ
笑えるような気持ちでも場面でもないときに、機械的に笑顔をこしらえてみると、どこか楽しい気分がもたげてくる感覚を覚える。テレビのニュースで、村人たちが集まって一斉に笑い合う講のような神事が報じられていることがあるが、この趣とどこかつながっているように思う。

マイクを向けられた村人たちは、「心身共にリラックスできて健康によい」とか「身体から貧乏神が逃げていくような晴々とした気分になれる」などと答えている。
笑いにはそういう力があるようだ。それまでのネガティブな感情を和らげたり、明るい気分に変えたりできるという効果である。

名役者と言われる人たちの演技は、意識、無意識に拘わらずこの力を応用しているに違いない。この力というのは、笑いだけでなく、悲しい演技や腹が立っている演技が必要となる場面で、まず笑い、まず泣き、まず怒るという「空(カラ)感情」を先行させ、本物の感情を掘り起こすという力である。このプロセスにより名演技が生み出されているように思える。

演技が必要のない普通の人間も、この力を日常の中でコントロールすることができれば、人はしたたかで、しなやかな精神をつくっていくことができるのではないか、と考える。
まずは、笑いの演技から取り組まれることをお奨めしたい。最初はぎこちない笑顔しか作れないかもしれないが、それでも構わない。そのうちに必ず本物の笑いが顔を覗かせるようになるはずである。

昔から「男は度胸、女は愛嬌」ということわざがあるが、現代では男の愛嬌も、力強く生きていくための大事なコミュニケーション能力として必要とされている。

「1日5回は笑おう」と呼びかけるどこかの病院の名医がいる。ボケ防止や血流をよくするという効果があるそうだ。まずは、不器用で無愛想なおやじたちから、笑いをお勧めしたい。「笑う門には福きたる」である。