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【四字熟語の処世術】「面従腹背」(めんじゅうふくはい)
Date:2016年10月31日18時03分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
連日報道される東京都知事の動向。築地の移転問題と膨れあがった東京オリンピック予算の圧縮問題。新たにその舵取りを任された小池都知事の手腕が問われている。
これまで溜まりに溜まった都行政の膿を出すことを公約に当選しただけに、時間的な制約のあるこれらの解決は喫緊の課題だ。小池知事もそろそろ広げた風呂敷をたたまなければならない時期を迎えている。硬軟織り交ぜた調整が続いているようだが、着地を誤れば風向きは一気に変わりかねない。気を休める余裕はなさそうだ。
小池人気が続く中、テレビを見ていて思うのだが、政治屋さんには「恥」という概念が常人とは違うようだ。選挙前はもちろん選挙後も小池知事に非礼を行った議員等が、まさに手のひらを返すように籾手で近づいて機嫌を取る態度には笑いが出てしまう。心の裏側の黒い塊は透けて見えるが、政治家に求められる「信」はその欠片も見えては来ない。
面従腹背という四字熟語がある。うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないこと、と辞書にある。小池劇場を見ていて頭に浮かんだ言葉だが、政治の世界ではこの手の輩がゴロゴロと居そうで、独特の世界観を作り出す一因にもなっているように思う。
面従腹背には強烈な負のイメージがあるが、腹背まではなくても納得がいかない上司の意見に渋々面従せざるを得ない部下達の苦労となれば、サラリーマン社会では日常茶飯事だ。日本人は内心を隠して表情を繕うことが得意なだけに、あからさまに内心を露わにする愚か者はいない。
その点、欧米人は自分の気持ちを隠すのが苦手に見える。内心の意思を表現してこそアイデンティティを保てると思っていそうだ。欧米人の中には日本人を「何を考えているか分からない」だから「不気味」とまで評する者もいる。確かに日本人の本音を外国人が探るのは難しいかもしれない。だからと言って、欧米人は正直で、日本人は不正直なのではない。複雑な心の内を器用に操ることができる能力を日本人は先天的に有しているだけだ。
人に二心あることは決していい事では無い。自身を顧みれば決して大声では言え無いが、自分の心に対して人は正直でなければならない。だから意に反し腹の内を隠して面従するのは褒められたことでは無い。しかし、これを日本人の器用さ故の世渡り術だと思えば、また違った見方ができる。