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【街景寸考】ギャンブルで思うこと
Date:2016年12月28日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
カジノ解禁法案のことで世間は最近まで騒がしかった。結局、12月15日の臨時国会で成立してしまったようだ。推進派は経済効果を期待し、反対派はギャンブルによる負の影響を懸念していた。慎重派は「まだ十分に国民的議論が尽くされていない」という意見だった。
賛否が分かれた法案だったが、わずか審議6時間弱で衆議院を通過させたというのは尋常ではない。ただ、ギャンブル依存症や治安の悪化を懸念する反対派の指摘も、茶番のように思えて白けた。
日本はすでに競馬、競輪、競艇の公営ギャンブルがあり、麻雀、パチンコなどのギャンブルも数多くある。パチンコ屋だけでも、その数は世界でも群を抜いており、年間の売り上げは23兆円ほどあるようだ。ラスベガスでの売り上げが1兆円も満たないというから、いかに日本がギャンブル大国であるかを窺うことができる。
初めてパチンコ屋に入ったのは、10歳の頃だ。ときどき叔父が、わたしを連れてパチンコ屋に行くことがあったからだ。パチンコに勝ったときの叔父は、大きな木箱に溢れんばかり入っているパチンコ玉を景品に換え、その景品を近くの景品交換所でお金に換えていた。端数はチョコレートか何かのお菓子に換え、「ほらっ」と言ってわたしの手に持たせた。
そんな叔父を見ていたせいか、子どもなりにパチンコ屋は「健全」な大人の遊技場だという印象を持っていた。ところが、この印象を変えたのは近所のオッサンだった。職業不詳のそのオッサンは、パチンコ屋に入り浸りの人間だった。オッサンは目当てのパチンコ台を確保するため、開店前からパチプロの列に毎日女房を並ばせ、気に喰わないことがあると公衆の面前でも女房の頬を叩いた。今で言うギャンブル依存症のなれの果てのオッサンだったように思う。
これに似たようなオヤジは、当時も相当いたように記憶している。ギャンブルで身を滅ぼす人が増えるという懸念は、少なくとも60年も前から取り組んでいなければならなかったことである。そのパチンコを今まで野放しにしておいて、今さらカジノによる負の影響がどうのという議員たちの無神経さに物申したかった。
もちろん、「だからカジノぐらい良いだろう」とは思っていない。経済効果も一時期のことだと思えるし、いずれその周辺地域も衰退していくのではないかと危惧してもいる。これが成長戦略の「第三の矢」などというのは、チャンチャラ可笑しい。