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【街景寸考】通信簿の所見欄
Date:2017年01月18日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
「落ち着きがなく、おっちょこちょい」「偏食が著しい」
小学校の頃、わたしの通信簿の所見欄によく書かれていた記述である。「おっちょこちょい」とは、「落ち着いて考えることをせずに、軽々しく行動する」というような意味だ。あまり褒められた性格ではないという自覚はあったが、級友に迷惑をかけることでもないので、ご愛嬌程度ぐらいにしか受け止めてこなかった。
わたしの場合、「おっちょこちょい」は忘れ物という形で最も表面化していた。宿題を忘れ、必要な教科書を忘れ、空の弁当箱や傘などを学校に忘れて帰るというのは日常茶飯だった。この性質は大人になっても変わらなかった。特に仕事での駆け出しの時代はうっかりミスを連発し、自分の「おっちょこちょい」加減に何度も嫌気が差した。
年老いた今でも、うっかりミスは後を絶つことはない。というより増えてきた。元々の「おっちょこちょい」の性質に、老人性のボケが勢いよく混じってきたからだ。
ここからは偏食のことを少し書かなければならない。
担任から偏食のことを指摘されたのは、わたしが給食を残していたからだ。偏食のことが所見欄に書かれたときは、多少後ろめたさがあった。後ろめたい気分になった理由の中には、わたしの青白い顔と偏食が無関係ではないと思っていたということもあった。
給食で残していたのは、脂身の混じった肉類、冷めた脱脂粉乳、ニンジン、こんにゃく、シイタケなどだ。学級担任から「全部食べなさい」と睨まれながら言われると、余計に気分が悪くなり食べる気がなお失せていた。
わたしの偏食は、祖母の手で育てられたのが主な原因だと思ってきた。祖母は、わたしが嫌いな物は決して無理に食べさせるようなことはせず、好きだと言えばしょっちゅう食卓に出してくれていた。これで偏食にならないほうがおかしい。好きだったのは大根や茄の煮物や厚揚げ、きゅうりのぬか漬けなどだ。これらは祖母好みの食材でもあった。
結婚後は、カミさんが作る料理の勢いに押されてか、食の偏りを少しずつ減らしていくことができた。お陰で健康診断の血液検査では、栄養に問題があるという忠告を受けたことがない。今でも苦手な食べ物は、うなぎ、納豆、レバー、牛タンなどだ。食べず嫌いのものでは、ひじき、なまこ、いかの塩辛、豚足などがある。まあ、他人に迷惑をかけることではないので今後も頑固に貫こうと思っている。
「おっちょこちょい」も「偏食」も、終生治ることはなさそうである。