【四字熟語の処世術】千客萬来(せんきゃくばんらい)

 Date:2017年03月30日12時26分 
 Category:文学・語学 
 SubCategory:四字熟語の処世術 
 Area:指定なし 
 Writer:遠道重任


 桜花爛漫…までにはもう少し時間がかかりそうだが、一年でもっとも好きな時期がやって来た。秋風にゆらりゆらりと花びらを揺らす秋桜も好きだが、どちらかと言えば黄色い菜の花が草原一面に広がる景色の方が好きだ。陰の気を感じ始める秋よりも陽の気が膨らむ春の方が、人の心にも陽気を注いでくれるからだろうか。いっぱいの菜の花の側にピンク色をした桜の花が咲いていれば、私には贅沢なシチュエーションだ。草の上に寝転がって見る青空。頬をなでる少しだけひんやりとした風。今年も短いがこの季節にしか味わうことの出来ない感覚を体で感じたいと思う。

 先日、文化サークルの仲間と花見をする約束をした。テレビで見たが福岡ではその日がちょうど桜の満開日だそうだ。今年は多くの人で賑わう桜見客の一員になれそうだ。

 聞くと桜見の名所に最近は屋台や出店が並ぶらしい。近所の公園で楽しむ程度の花見しか知らない私には想像がつかないのだが、そこに昔ながらの花見の風情はあるのかと少々心配だ。祭りのイベント会場さながらの風景だと花見は二の次になりはしないだろうか…。とはいえ、出店は好きな方だからこれもまた楽しみではある。予定日が天気に恵まれさえすればきっと千客万来、出店や屋台にとっては稼ぎ時になるに違いない。

 千客万来…辞書には多くの客が入れ替わりひっきりなしに来て絶え間がないこと、とある。商売人にとってこんな状況が来ればこの上ない幸せだろう。事業家にとって顧客の動向は生死に関わる重大事。何よりも気になるところである。

 福岡市は起業家が巣立つ街として全国的にも有名だという。期待と不安が交叉する毎日を送る起業者にとって「千客万来」は夢のまた夢である。その実現に向けた過程の中で様々な課題に直面し、課題解決に向けた工夫が生まれ、チャレンジする力が沸き上がる。不安が尽きないのは当然で、起業者には耐えなければならない壁だろう。しかしその分、起業者にしか分からない喜びもきっとあるに違いない。その喜びを感じ続ける限り、千客万来の夢も決して夢で終わることはないのだろう。