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【四字熟語の処世術】初秋涼夕 しょしゅうりょうせき
Date:2017年08月23日09時53分
Category:
文学・語学
SubCategory:
四字熟語の処世術
Area:
指定なし
Writer:
遠道重任
波の音を聞きながら眠りにつき、波の音で目を覚ます。目と鼻の先に広がる海。都会生活では味わえない風情を感じさせてくれる日常。夜、月明かりが波に揺られて自分の手許に届く光景はお金には代えがたい。都会の光が作り出す夜景も又、対岸から眺めてこそ絶景。その人工美はいつ見ても飽きることはない。
今年の福岡の夏は異常なまでに高温が続き、猛暑に慣れてしまった体は気温が35度を超えてもさほど驚かなくなってしまった。異常気象はもはや異常では無く、いつものことだと感じてしまう。感覚はすでに麻痺している。ゲリラ雷雨は今年も荒れ狂っている。線状降水帯の発生で起こる集中豪雨は山を崩し、土石流を引き起こし、河川を氾濫させて人家を襲う。福岡県朝倉市をはじめ全国各地で多くの犠牲者を出した豪雨災害。線状降水帯という用語が夏場の天気予報で恒常化しないことを祈るばかりだ。
夏の猛暑はまだ残ってはいるが、暦の上ではすでに「立秋」を過ぎた。昼間は相変わらず強い日差しに肌を焼かれそうだが、夜も11時近くになると窓からひんやり涼しい海風が入り込んでくる。気づけば蝉の声は聞こえてこない。365日を通して静かに静かに季節を運ぶ自然の営み。一年は四時(春夏秋冬)と八節(立春、春分、立夏、夏至、立秋、秋分、立冬、冬至)、さらに二十四節七十二候に分かれる。五日に一候づつ運ぶ季節の変化は穏やかで、その兆しを肌で感じることはない。日々の生活に追われる現代人に、その変化に気づけという方が無理かもしれない。
初秋涼夕…秋の初めの涼しい夜をいう。まだまだと思われる方も多かろう。だが、寝る前に屋外の風にあたれば、すでに感じる初秋の涼夕である。
自然の変化に限らず、善きにつけ悪しきにつけ、事が起こるには微かだがその機(きざし)が顕れる。善事なら善いが、悪事ならその機を察知しその機先を制することが大事に至らない最善の策となる。
変化著しい現代とはいえ、その変化も急に起こることはない。そこには必ず機(きざし)がある。時代の寵児と呼ばれる人の多くは、その変化の機に敏感だった人たちである。
凡事にとらわれの身としては、日々喧騒の中で心はざわつくばかりだが、その心を静めて変化の機(きざし)に気づける人間でありたいと思う。自然や時代、社会の変化だけでなく、身近な回りの人たちの心の変化にも敏感でありたいと思う。