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Date:2017年08月30日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
まだ週三日のパート労働を続けている。もうすぐ2年半になる。パート先はミニトマトのハウス栽培を営む農業生産法人だ。週三日勤務は自分の希望だったが、雇用者側の条件でもあった。双方の条件が合致したのは、収穫が隔日で行われるからだった。仕事が辛くても翌日が休みになるので、その辺が続いている最大の要因である。
この8月には収穫が終わり、約8000本のトマトの株を撤去する時期になる。撤去作業は、まず株の直ぐ上の茎を剪定鋏で切り、更に一定の長さに切り揃えて束にする。その束を台車に積んで運び出し、大型トラックに積み込む。トラック3台分ほどの量になる。
更に、使い古した培地(水耕栽培用)も撤去し、次の苗を植えるための新しい培地に置き換えるなど、様々な準備作業がある。ハウス内は摂氏40度を超えており、この暑さが重労働に追い打ちをかける。作業を30分も続けると喉が猛烈に渇き、朦朧としてくることもたびたびある。
つい先日、40代の女性が暑さで一時的に動けなくなった。典型的な熱中症である。このときのハウス内の温度は、摂氏44度に達していた。彼女はしばらく休憩した後、気を取り直すようにして作業に戻った。自分だけ休んでいるわけにはいかないという、強い気持ちがありありと伝わってきた。
パート要員は総勢9人。この中には子育て中の女性が2人いる。そのうちの1人が前出の熱中症の女性であり、もう1人は4人の小さな子どもを育てる女性である。収穫のピーク時には、定時で仕事が終わらないときは一旦保育園に預けている2人の子どもを引き取りに行き、再び作業を続けることもある。
懸命に子育てをする彼女たちの姿は、かつて同じように4人の子どもを育ててきたカミさんと重なって見えた。細身(当時)ながら、持てる力を振り絞って子どもたちを育て、家庭を守ってきた姿だ。両者を重ね合わせながら、「母は強し」という言葉が何度も頭の中を駆け巡った。亭主たちがいくら「金を稼いでいるのは俺だ」と、その存在感を誇示してみても、母である妻たちの大変さに比べれば屁ほどの価値もないように思える。
誰も「父は強し」とは言わない。命に代えても子どもを育てようとする思いは、母親の方が明らかに強いからだ。カミさんにいくら感謝してもし足りないことを、改めてこの職場で働く彼女たちを見ながら気づかされた。
新しい苗が育ち、収穫が始まるのは10月に入ってからだ。それまでは、遅ればせの夏休みを過ごすことになる。