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【街景寸考】「タクシー運転手」のこと
Date:2017年09月13日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
タクシーに乗る際、運転手がどういう性格なのだろうかと、いつも気になる。明るいタイプなのか、それとも陰気なタイプなのか。はたまた、少しぐらい乗客に気を遣ってくれるタイプなのか、愛想のないタイプなのかと。
短い距離の場合は、運転手の機嫌の状態を探りつつ乗っていた。顔の一部が映るルームミラーをチラチラ見たり、後頭部や背中のわずかな動きを凝視したりして機嫌の状態を探っていた。客である自分がなんでここまで気を遣わなければいけないのかと思いながらも、やはり短い距離だと気の毒に思う気持ちもあった。
そこまで客が気を遣っているというのに、行先を告げた途端に「チェッ」と舌打ちをされたことがあったり、わざと乱暴な運転をされたりしたこともあった。そういう場合、その無礼な態度にむかっ腹の立つこともあるが、ときには拉致監禁されたかのような恐怖心を味わったこともあった。
長い距離を乗るときも、心配することがあった。喋り出したら止まらない運転手に当たるかもしれないという心配だ。退屈させまいと乗客を気遣っているつもりの運転手もいるが、ただ勝手に喋り続ける無神経な運転手もいる。どちらも迷惑千万な話であるが、特に後者の場合いは大いに気疲れする最も嫌な場合である。
運転手の長話には、1回たりとも相槌を打たないという作戦で臨んでも、悔しいことに自分はそこまで強い性格ではない。むしろ、「ほうー」とか「そうですか」とかの相槌を打ってしまうことの方が多い。この相槌が火に油を注ぐような恰好になってしまい、タクシーの中で自分の性格を悔やんだことが何度もあった。
ある時、タクシーに乗るのも悪くないと思える話を聞いた。「タクシー運転手はいつも色々な乗客を乗せているので、見聞きしてきたおもしろい話を聞き出すことができる」と言うものだ。この話は直ぐに納得でき、実践してみたい目標の一つになった。
以降、わたしはタクシーに乗るたびに、これまで乗せたことにある珍しい乗客のことや、街角景気のこと、乗客から聞いた意外な情報などを運転手から聞き出そうと、いつも心に留めてきた。1度だけの経験だったが、マル秘情報を聞き出せそうな機会があり、そのときはまるで探偵のような気分になり、ワクワク、ドキドキしたこともあった。
運転手の中にも、乗客から色々な情報を積極的に聞き出したいと思っている者が、結構いるのかもしれない。話のネタ探しのために、わたしも一度はやってみたいと思う職業だ。