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【街景寸考】「次郎が来た」のこと
Date:2017年09月20日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
また子猫が我が家にやって来た。生後2、3カ月くらいの子猫だ。近くに住む次男が我が家に来る途中で出会ったらしく、そのまま人懐こく次男の後を追って来たようだった。子猫が家の前まで来たのは仕方がないにしても、この後の身の振り方までカミさんと次男は案じ、結局、我が家で一時保護をするということになった。
さて、自宅に入れることで、早速心配しなければならないことがあった。すでに我が家で暮らしている猫・黄太郎(1歳)との関係である。黄太郎が子猫と顔を合せたときに、果たして仲良くしてくれるかどうかという心配だった。
黄太郎は未だ家の外に出たことのない、まったく世間知らずの猫である。たまに窓から他の猫を見ることはあっても、交流の経験は一度もない。こうした身の上だったので、黄太郎は自分のことをわたしたちと同じ人間だと思っているかもしれず、だとしたら「猫」が嫌いな猫かもしれないのだ。わたしが最も恐れたのは、その黄太郎が自分の縄張りに突然現れた不審な猫を排撃するかもしれないということだった。
二匹が家の中で対面したとき、直ぐに想定外のことが起きた。体格で3、4倍大きな黄太郎の方が子猫を恐れ、戸惑いながら遠巻きに眺めるという行動に出た。子猫が黄太郎の方に一歩近づくと、五歩ほど後退りした。そうかと思うと、子猫が黄太郎から離れると、離れた分だけ近づいた。
二日目は、前日より二匹の関係は近づいた。黄太郎の方から、少しずつ距離を縮めてきたのだ。恐怖心から好奇心の方に比重が移ってきたようだった。時折、子猫の鼻先や尻辺りに鼻をつけ、臭いを嗅ぐ仕草をしては直ぐに離れるという行為を繰り返した。そんな黄太郎に子猫がじゃれるように飛びかかると、黄太郎は目を丸くして驚き、飛びのいた。
三日目、黄太郎は子猫を同居人として受け入れる様子を見せるようになった。そして、二匹は一日中じゃれ合った。わたしは子猫を「次郎」と呼ぶことにした。次郎は黄太郎に飛びかかり、黄太郎も次郎に飛びかかった。二匹とも正面からそれを受け止めた。
四日目になると、まるで兄弟のように行動を共にするようになった。黄太郎は兄貴分としての自覚も現れ、じゃれてくる次郎をあしらう余裕を見せるようになった。今は、仲良く寄り添って眠るまでの関係になっている。
ところで、次郎の「一時保護」の件についてだが、今もって誰も知らぬふりである。