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【街景寸考】大阪人のこと
Date:2018年06月06日08時01分
Category:
エッセイ
SubCategory:
街景寸考
Area:
指定なし
Writer:
大昭寺いさじ
どちらかというと、わたしには東京人より大阪人の方が馴染みやすい。東京人には何となく苦手意識があった。社交的だが、なかなか本音を見せてくれず、一緒に酒を飲んでも、なかなかバカ振りをしてくれないという印象がある。
東京で過ごした学生時代、地方出身の学生に比べて東京人と親しくなるためには、多くの時間を要した。しかし、一旦親しくなってしまうと、何の隔たりもなく、こだわりもなく、九州人と同じ情緒を持っているような親しい関係をつくることができた。
大阪人の場合は、直ぐに親しくなることができた。煙幕を張った話し方をするわけでもなく、気取って話すようなこともなかったからだ。いきなり本音を晒すところもあり、びっくりしたことが幾度もあった。ユーモアを交えながら喋ってくれるところもいい。こんなふうだから大阪人には、つい胸襟を開いてしまう。
加えて大阪人の気質には「早口、親しみやすい、冗談好き」という特徴もある。こうした特徴は、我々九州人が持つ「短気、直言、熱し易く冷め易い」といった気質とは異なるが、どこかの部分で重なり合う情緒があるような気がして、一層馴染みやすく思えた。
初めて大阪へ行ったとき、ある光景を見て驚いたことがあった。大阪駅前の交差点でのことだ。信号は赤色なのに、横断歩道を次々と男たちが小走りに渡っているではないか。この光景を目にして、大阪人が「せっかち」な気質であるということを思い起こしていた。同時に「人目も憚らない」という印象もあったので、それらの気質が一つになっているような光景に見えて、面白かった。
「気取らない」「人目も憚らない」という大阪人の気質は、通勤電車の中でも窺うことができる。東京では日経新聞や英字新聞を読むサラリーマンを多く見受け、大阪ではスポーツ新聞を読むサラリーマンが目立ち、エロ漫画を読んでいる光景もたびたび目にした。この違いは教養の差というよりも、気質の違いによるものだと解釈すべきだろう。
一方、学生時代に親しかった東北人は、共通して「温厚、お人好し、我慢強い、気が長い、純朴」という気質があった。これらの気質は九州人とは大分異なるが、なぜか実に馬が合った。学生時代に最も多かったわたしの友人は、東北出身だった。
では、東北人と大阪人の関係はどうか。これはたまたまのことではあるが、この両者が友人同士になっているという関係をほとんど見たことがなかった。東京で堂々と関西弁で喋る大阪人に対し、公の場では東北弁を極力控えようとする東北人の気質の違いが一因にあるのではないかと、勝手に思い込んでいたことがあった。
以上は、わたしの狭い経験の範囲での独断的な感想であり、合理的な根拠はない。